2010年 インドア世界選手権第3戦バルセロナ(スペイン)

2010年1月31日/Palau Sant Jordi/観客数:--人

ようやくファイナルを走るも

photoインドア世界選手権も、はや第3戦を迎えた。インドアのスケジュールは、いつも変更が多くて目まぐるしい。今年も、当初は南米での開催が組まれていたが、いまのところの(しかしいまだ、決定はされていない)状況では、南米大会の開催はない模様。ということは、残りはマドリッド大会とマヨルカ大会の2戦だけになる。どちらもスペイン。世界選手権ながらも、5戦中3戦がスペインでの戦いとなる様子だ。

さてそんな中でもバルセロナは特別な大会だ。藤波だけでなく、ジェイムス・ダビルもスペインに住んでいる。トライアルの一大拠点バルセロナでの戦いは、ほぼすべてのトライアルライダーにとって、聖地での一戦という様相となる。スペインのトライアルメーカーは、バルセロナにメインオフィスを持つところが多いし、そうでなくてもバルセロナ近郊にある。ライダーもバルセロナ出身者は数多い。そして、大会の会場も、ここがもっとも広い。

2戦連続でセミファイナルへの進出ができなかった藤波貴久は、今回バルセロナで起死回生をねらっている。バルセロナの(というより、スペインのインドアは全体的にそんな傾向だが)セクションは高さのあるものが多く、いけるか落ちるかというものが多い。逆に、トライアル的なむずかしさは少々少ない。インドアではまだまだ経験が少ない藤波だが、しかしバルセロナでは2位にはいったこともある。期待はできる。

photoクォリファイは5つのセクションでおこなわれた。ここで4位までにはいれば、セミファイナルに進出というルールは、前回同様。ここで、グビアン(フランス・ガスガス)とウイグ(イギリス・ベータ)がオール5点の25点。ダビルが第1セクションだけをクリーンして20点。

逆にボウ(スペイン・モンテッサ)はオールクリーン。カベスタニー(スペイン・シェルコ)は第3セクションでだけ5点を取って5点。

残る二つの席を争うのが、藤波とファハルド(スペイン・ベータ)、ラガ(スペイン・ガスガス)だ。藤波は第4セクションで5点、しかしトータル10点で、クォリファイ3位を獲得した。ラガは、藤波が5点となった第4セクションをクリーンするも、他のセクションで減点が多く17点。それでもダビルより3点いいスコアをマークしたのだが、ファハルドが15点で回ったため、ラストチャンスに回ることになった。

今年初めて、藤波が走らなくてもいいラストチャンス。ダビルとウイグ、グビアンの3人とラガの4人。ここからふたりがセミファイナルに復活してくる。実力からして、ラガの復活はまったく問題ないはずだった。ところが、ふたつしかないラストチャンスのセクションは、ちょっとやさしめだった。ひとつめを全員クリーン(ウイグがタイムオーバーで1点)としたあと、ダビルとグビアンが1点で抜けたふたつめで、なんとラガのマシンにトラブル。これでダビル1点、グビアン2点に対し、ラガ5点でラストチャンス敗退となってしまった。世界チャンピオンでもあり、バルセロナの英雄でもあるラガが、バルセロナインドアのファイナルを走らない、しかもラストチャンスのダブルレーンとセクションを二つ走っただけ。そのラガに勝ってセミファイナルに進出したグビアンは、クォリファイでオール5点なのだから、実力が成績につながっていない試合展開となっている。

さて、そんな波乱のあとのセミファイナル。実は今回のバルセロナ・インドア大会は、インドアエンデューロ世界選手権との併催だった。インドアトライアルの開幕戦に出場したドギー・ランプキン(イギリス・ベータ)は、今回はエンデューロの方に出場している(ランプキンはインドアのノミネートライダーではない)。ほかにはタデウス・ブラズシアク(ポーランド・KTM)など、なつかしい顔ぶれもあった。

トライアルとエンデューロは、スケジュールが交互に組まれていた。さすがにエンデューロはトライアルセクションは走らないが、セクションの周囲をエンデューロコースに囲まれていて、レースが始まるとセクションの表面に砂ぼこりがうっすらとかぶってくる。条件を整えたいライダーにとっては、これを掃き清めたいところだが、テレビ撮影の関係上、セクションへの立ち入りは認めれらなかった。これが、セクションの難易度を一変させていた。

セミファイナル。基本的にはクォリファイと同じセクションを使っているにも関わらず、一気に減点が増えた。セミファイナルは6人の戦いで、セクションが3つとダブルレーン。ボウはすべてクリーンしたが、藤波、カベスタニー、ファハルド、グビアンの4人がオール5点! ここでなんと、グビアンが最後のセクションで1点+タイムオーバーの1点で通過した。どうやらダビルは、高いステアにはアドバンテージがあるようだ。

photo3つのセクションのあとのダブルレーンでは、ボウとファハルドが対戦。ファハルドが勝った。15点もアドバンテージを持つボウは、少しゆっくり確実に走ったのだが、実はレース前には、藤波に「勝ってフジを楽にしてあげるから」と約束していた。でもファハルドはファハルドで、ファイナル進出に向けて必死だ。ボウは「ごめんね、勝てなかった」とあやまってきた。

次はカベスタニーとダビルの戦いだった。カベスタニーが勝利し、ダビルが1点減点。最後に藤波とグビアンの戦いとなった。グビアンは藤波にレースで負けた上に足つきもあって、グビアンのセミファイナル敗退は決定した。

トップはボウで1点、2位がダビルで13点。以下3位が3人。カベスタニー、藤波、ファハルドが15点で並んだ。この場合、順位を決めるのはクォリファイの順位だ。クォリファイでは、それぞれカベスタニーが2位、藤波が3位、ファハルドが4位だから、ファハルドのセミファイナル敗退が決まった。

そしてファイナル。藤波の、今年初めてのファイナルとなった。セクションは4つ。ファイナルでは、セミファイナルの減点が加算されるから、セミファイナル4位でファイナルに進出した藤波は、上位に入るにはかなりの追い上げが必要だ。逆にボウは、ファイナルが始まる時点でダビルに12点差をつけていることになる。

第1セクションは全員がクリーン。ここで、藤波にトラブルが発生した。リヤブレーキが破損したのだ。第2セクションをトライするまでのインターバルは3分。この間にマシンがなおれば問題はない。しかし間に合わなかった。こうなると、スペアマシンを引っ張り出すしかない。藤波にはふたつのチョイスがあった。ひとつは2008年型の自分のマシンを使うこと(藤波は、2009年型は1台しか持っていない)。もうひとつは、ボウの2009年型スペアマシンを借りること。藤波は、2009年型のボウ仕様を選んだ。

しかし結果、第2セクションで5点。エンジンのマッピングやライディングポジションもちがうので、自分のマシンとはやはり勝手がちがう。それでも2008年型と2009年型のちがいは、それ以上に大きいというということだ。

第2セクションはダビルと藤波が5点となって、続く第3セクション。ここで藤波のメインマシンがなおってきた。自分のマシンに戻って、しかし第3セクションでもダビルと藤波が5点。セミファイナルで藤波はダビルに2点負けている。最後のセクションでダビルに2点ついてもらうか、ダビルに1点ついてもらって、藤波がセクション走破タイムでダビルに勝れば、藤波の表彰台が決まる。

結果、最後のセクションでは藤波もダビルもクリーンだった。セクション走破タイムはダビルが1分20秒ほど、藤波が58秒で、藤波が勝っていた。しかし減点でダビルが1点勝っているのだから、このタイム差が結果に影響することはなかった。

カベスタニーはファイナルをオールクリーンしたが、セミファイナルでボウに14点差をつけられていたから、ボウの勝利は安泰。そのボウは、最終セクションでいきなり5点となって大転倒し、トータル減点は6点。それでもカベスタニーに10点差で今シーズン2勝目を挙げた。

○藤波貴久のコメント

「なんとか、低迷は脱出した、というところでしょうか。でも同時に、今回は3位にはなれた試合でしたから、ファイナルに残ったという喜びよりも、悔しさの方が大きいです。今回もクォリファイは3位ですから、それだけにジレンマがあります。クォリファイの結果や、ラガが最初の段階でいなくなってしまっているのを見ると、実力が成績に結びついていないという感じはあります。ダビルの、特にインドアでの実力が上がっているのは認めますが、全体的には、実力よりひとつの失敗で敗退が決まるというこのルールには、ぼくだけでなく、まだまだみんなは賛成していません。これでぼく、ジェロニ、アダムと、3人がルールの犠牲ともいえる不本意な結果をつくってしまいましたから。そうそう、最後のトニーの5点。あれは、なにかをやらかそうと企んだんだと思います。木のセクションで、中ではトライアル的にむずかしいセクションだったから、気を使わないといけない設定だったけど、減点は大幅に開いてるし、お客さんに対して、なんかアピールしようと思ったんでしょうね。失敗して、大転倒でしたけど」

Indoor Trial WorldChampionship 2010
Barcelona
Final Lap
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・HRC 6
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 16
3位 ジェイムス・ダビル ガスガス 24
4位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 25
Semi Final
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・HRC 1
2位 ジェイムス・ダビル ガスガス 13
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 15
4位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 15
5位 ジェロニ・ファハルド ベータ 15
6位 ロリス・グビアン ガスガス 19
7位 アダム・ラガ ガスガス 5
8位 アレックス・ウイグ ベータ 11
Qualificarion Lap(予選)
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・HRC 0
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 5
3位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 10
4位 ジェロニ・ファハルド ベータ 15
5位 アダム・ラガ ガスガス 17
6位 ジェイムス・ダビル ガスガス 20
7位 アレックス・ウイグ ベータ 25
8位 ロリス・グビアン ガスガス 25
PointStandings(ランキング)
1位 トニー・ボウ 55
2位 アルベルト・カベスタニー 50
3位 ジェイムス・ダビル 30
4位 アダム・ラガ 25
5位 ジェロニ・ファハルド 21
6位 藤波貴久 17