2009年 インドア世界選手権第2戦マルセイユ(フランス)

2009年1月24日/Palais du Sport, Marseille/観客数:--人

欲を出した結果?の4位

photoシェフィールドで2位に入り、好調をもってマルセイユにのりこんだ藤波貴久。この数年、納得いく走りができていなかったインドア世界選手権にあって、今年は実力を発揮して結果を残したい。そんな思いが藤波にもあふれていた。

予選ラップ。今回はシェフィールドで採用された全員がそれぞれのセクションをトライするという形式ではなく、従来通り、ひとりずつが決められたすべてのセクションをトライするという形式となっていた。このトライ形式は主催者が決められるので、今後の変化もありえるが、どうも大勢は走り慣れたこの形式のようだ。

しかしこれが藤波にとっては少しうれしくない結果にもつながった。前回のように、全員が同時にセクショントライをするのであれば、スタート順はほぼ影響なしといっていいが、ひとりずつトライするとなると、スタートは後の方が、先行するライダーのトライを参考にできるから有利だ。前回2位に入った藤波は、ボウの前、後ろから2番目のポジションでトライできるものと思っていた。最終的にはくじ引きなのだが、トップ3、そのうしろ3人によるくじ引きだから、トップ3に入っていれば、悪くても後ろから3番目のスタート順となるわけだ。

ところが与えられたくじ引きオーダーは、去年のランキングによっていた。くじ引きの相手は、ジェロニ・ファハルド(ベータ)とマイケル・ブラウン(シェルコ)。しかも藤波はくじ運が悪くて、なんとゲスト参加のロリス・グビアン(ガスガス)に次ぐ2番手のスタートとなってしまった。

藤波のあとを走ったスペイン勢の中では、唯一ファハルドが藤波より5点多い減点でクォリファイ5位となったほかは、アルベルト・カベスタニー(シェルコ)が藤波より2点好得点をマーク、さらに1点差でアダム・ラガ(ガスガス)、ラガに2点差でトニー・ボウ(モンテッサ)がクォリファイトップとなった。あとから走った藤波はスペイン勢3人の先行を許してしまうことになった。

今年は、ファイナルには6人が参加する。クォリファイはファイナルでの走行順にこそ影響を与えるが、昨年まではクォリファイラップで4位以下の順位が決定していたことを思うと、今年のルールの方が、より多くの逆転劇が期待できるルールとなっている。もちろん藤波も、ここで逆転劇を演出するつもりでいた。

ファイナルラップ、今年はまず最初にダブルレーンのスピードレースが行われる。去年は最後の勝負がダブルレーンだったから、2009年の特徴ともいえるシステムだ。そしてダブルレーンは、これまで藤波の得意とするカテゴリーのひとつだった。

藤波が勝負をする相手は、クォリファイで4位だったカベスタニー。ここで藤波はカベスタニーに負けて減点2。シェフィールドに続いて、ダブルレーン2連敗となってしまった。去年なら、ダブルレーンの敗北は減点1だったが、今年は2点。この減点は痛かった。

続く6つのオブザーブドセクションは、シェフィールドに続いて難度の高い設定だった。

インドアトライアルで"難しい設定"というと、高さがあったり助走がなかったりと、いわゆるスペイン的インドアセクションになることが多いが、マルセイユはフランスを代表するインドア。スペインとはちがって、一発で5点になるポイントは少ないが、減点はそこここでとれるようになっている。

藤波は、前回の2位を維持して、というより、前回の2位に甘んじることなく、さらにその上を目指していた。となると、最初に失った2点はどこかで挽回しなければいけない。これが、藤波に緊張を与えた。第2セクション(ダブルレーンが第1となる)ではブラウンが3点+タイムオーバー2点、ファハルドが1点+1点。藤波はタイムオーバーなしの1点だった。カベスタニーはクリーン、ラガはタイムオーバー1点、最後のボウはクリーン。これでカベスタニーとボウが減点0、藤波とラガが減点3。いきなり、ちょっと点差がついてしまった。

これで藤波は、勝利のためにより気合いを入れてセクションに臨まなければいけなくなった。しかも逆転を狙って、安全策に走ることなく、クリーンをとりにいくことにもつながっていった。

第3セクションで藤波は減点1+タイムオーバー1点。クリーンを狙って足が出て、リズムが崩れて時間内にセクションを出ることができなかった。しかしこのセクション、ラガはタイムオーバーなしの減点2。ボウとカベスタニーには小差をつけられたが、ラガとは同点だった。

第4セクション。ここでも藤波は減点1、さらにタイムオーバー減点2点。中盤の折り返しで、藤波の減点は8点。ラガに1点差をつけられ、逆にファハルドに同点に追いつかれていた。ファハルドはブラウンとダブルレーンを戦って勝利した分、有利に戦いを進めていた。

4セクションを終えたところで、その時点の順位でトライ順が切りかるが、今回はカベスタニーとラガが入れ替わっただけ。藤波はやはり4番手でトライを続ける。

後半の3セクション、しかし藤波の逆転劇は訪れない。第5セクションではクリーンするもタイムオーバー1点。結局藤波は、6つのオブザーブドセクションのうち、4セクションでタイムオーバーを喫することになった。

結果は、ファハルドには9点の大差をつけたものの、ラガに3点差。カベスタニーとボウのトップ争いには10点差をつけられてしまった。

シェフィールド、マルセイユの2連戦。インドアの戦いは高さへの挑戦よりも、タイムオーバーをしないスムーズなトライが重視されているようだ。そのため、前走者がどこでつまずき、ひとつのセクションにどれくらい時間をかけたかが大きな参考となる。もちろん高く飛びつくテクニックも重要だが、好成績を挙げるためのテクニックは少しずつ変わっているのかもしれなかった。

photo今シーズン、2戦を終えたところで、フランス大会の1戦の中止がアナウンスされた。いまのところ開催が決まっているのはバルセロナ(スペイン)、ミラノ(イタリア)、マドリッド(スペイン)の3戦。チャンピオンシップの戦いも数少ない戦いでの勝負となるが、勝ちにいけるチャンスもまた少ない。

新しいマシンセッティング、新しいテクニックは順調に自分のものにしてきている。シェフィールドでのむち打ちは、このインターバルに病院通いをして、だいぶ回復した。

好成績を目指して欲を出さなければ、ラガに負けることはなかったのではないか。そんな反省は同時に、藤波のインドアでの戦闘力があがっていることも意味する。勝てる試合運びをするための気持ちの高め方をどうコントロールするかが、課題となった。

残り3戦のインドアシリーズは、見逃せない。

○藤波貴久のコメント

「今回は、ぼくの中では最悪の結果、最悪の試合でした。第1戦がよかっただけに、なさけない思いです。優勝したい、いい成績を残したいという思いが、空回りを生んでしまいました。それがさらに、かけに出なければいけない状況を作って、バランスを崩して時間を失うという悪循環です。ダブルレーンで負けたのも課題です。どうして負けたのか、ビデオを見ながら研究中です。次は負けませんよ」

Indoor Trial WorldChampionship 2009
Sheffield
Final Lap(決勝)
1位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 4
2位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・HRC 5
3位 アダム・ラガ ガスガス 11
4位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 14
5位 ジェロニ・ファハルド ベータ 23
6位 マイケル・ブラウン シェルコ 26
Qualificarion Lap(予選)
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・HRC 5
2位 アダム・ラガ ガスガス 7
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 8
4位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 10
5位 ジェロニ・ファハルド ベータ 15
6位 マイケル・ブラウン シェルコ 21
7位 ロリス・グビアン ガスガス 27
PointStandings(ランキング)
1位 トニー・ボウ 14
2位 アルベルト・カベスタニー 11
3位 藤波貴久 10
4位 アダム・ラガ 10
5位 ジェロニ・ファハルド 5
6位 ドギー・ランプキン 4
7位 マイケル・ブラウン 3
8位 ロリス・グビアン 1