2009年 インドア世界選手権第1戦シェフィールド(イギリス)

2009年1月3日/Hallam FM Sheffield Arena /観客数:8,000人

まずは幸先よし。2位!

photo新しい年、新たなシーズンはインドアから始まる。2009年のはじまりはイギリスのシェフィールド。イギリス人には人気のこの1戦が世界選手権として復活したのは2006年以来3年ぶりのことだ。

2009年のインドア世界選手権は、ユーロスポーツが全戦中継をするという明るい話題があった。日本では見ることができないが、ヨーロッパのトライアルファンは、リアルタイムでインドアの戦いを楽しむことができる。

テレビ中継が入るため、2009年からはインドアのルールがだいぶ変更になった。まず、ファイナルを走るのがこれまでの3人ではなく、6人となった。4位以下の順位を決めるためのものでもあったクォリファイラップは、今年からファイナルラップのトライ順を決めるためのものとして位置づけられる。

クォリファイでは、これまではひとりずつが全部のセクションを持ち時間内で走っていたが、今年からは7人がそれぞれ指定されたセクションから同時にトライをする。第1セクションはランプキン、第2セクションをブラウン、第3を藤波、第4がファハルドといった案配だ。ただしクォリファイはそれぞれの主催者の裁量に任せられているということで、大会によって異なるルールが用いられるかもしれない。

そのクォリファイラップ、藤波は大きなミスはなく、1回の足付きやタイムオーバー減点など(1分半のセクション持ち時間を過ぎると、30秒ごとに1点が減点される)細かいミスのみでまずまずの試合進行ぶり。ところが中盤、大アクシデント。クラッシュして、しかも頭から転落するという大事故に見舞われる。落ちた具合が悪く、手を出すことも体で受け身をとることもできず、後頭部からまっさかさまにフロアに叩き落ちてしまった。すぐにスペインのトレーナーの先生に連絡をとって痛み止めなどの処方をおこない、なんとか試合に復帰した。

首を痛めていて、その日はともかく、翌日には首が回らないというなかなかの重症だったが、しかしなにが幸いするかわからない。この日は開幕戦ということで、藤波のみならず、ボウをはじめ、参加ライダーみんなが緊張の中トライをしていた。藤波はこの負傷を負ってしまったため、緊張どころではなくなった。首は痛いが、逆に緊張のほぐれた状態でトライができる。不幸中の幸い、かもしれない。

そしてクォリファイでの藤波は、手負いのまま、最後の最後まで3位を争う位置につけた。ダブルレーンの相手は、かつてのチームメイト、そしてこの地の大スター、ドギー・ランプキンだった。

藤波はダブルレーンに強い。トライアルそのものもさることながら、スピードを出すことにかけても、トライアルライダーの中では世界屈指の実力者だ。しかし今回はちがった。しかもおまけに、今回からダブルレーンの減点方法に変化があって、負けると2点減点となっていた(08年までは1点)。

ダブルレーンで負けたことで、クォリファイの結果は、それまでの3位から一気に5位に転落。ランプキンと、ランプキンと同点で並んでいたファハルドが藤波の上位につけることになった。

去年までなら、これで痛恨の表彰台逸脱となったわけだが、今年はちがう。スタート順が前の方になるという不利はあるが、まだ勝利のチャンスも残されている。

ファイナルラップは、まず第1セクションを全員がトライし、次に第2、第3と順にトライしていく。その順は、最初の3セクションまではクォリファイラップの順、残るセクションは、3セクションまでの成績によって決まるというルール。藤波は前半の3セクションを2番目に走り(6人中5番だったから、2番手スタートとなる)、後半のセクションを3番手で走った。

ライバルのスペイン勢は、クリスマスや正月も、ずっとインドアを走り続けてきた。つい12月27日にも、インドアのスペイン選手権があったばかりだ。対して藤波は、直前にインドアのための練習をしただけ。ハンディは大きい。

しかし一方、開幕戦がシェフィールドというのは、スペイン勢の優位性をいささかそこねてもいた。セクションコーディネーターは伝統的にマーチン・ランプキンで、スペインのそれのように高いステアが少なく、丸太などスペインのインドアには珍しい素材もあって、必ずしもスペイン勢ばかりが有利ということでもなくなっていた。

首の痛みに耐えながらの藤波は、後半にはボウとラガに次いで、3位にポジションを進めていた。まずは表彰台獲得という目標は達成できそうな感じではあった。そして最終セクション。ここまでの減点数は、トップがボウで7点、ラガが8点、藤波が9点と大接戦だ。4位はランプキンで、さすが地元ではいい走りを見せたが、藤波とはちょっと差が開いた。優勝争いは、やはりトップの3人に絞られている。

最終セクションはここは水のセクション。藤波はここをクリーン。ただしタイムオーバーがあって、トータルでは1点減点ということになった。これで藤波の減点は10点だ。

photoその後を走ったのがラガ。ここでラガが減点3。トータルで11点と、藤波の減点に上積みする結果になった。最後を走ったボウは、確実に走り切って7点のまま。1位ボウ、2位に藤波、1点差でラガという表彰台の顔ぶれとなった。

開幕戦から表彰台を獲得。首の痛みはうれしくないが、結果は悪くない。このシーズンは、これまでのシーズンに比べて、ファイナルに勝負を挑めるルールとなっているから、藤波にとっても、なかなか楽しみなインドアシーズンとなっている。

今シーズンは、連年に比べてインドアのスケジュールが少なめだ。その機に乗って、藤波もマシンの方向性を大きく変更した。これまで弱点だったところを長所に変えるべき変更だ。同時にそれは、ライディングの改造も意味している。インドアシーズンの今、藤波重要な時間が続く。

○藤波貴久のコメント

「トニーには勝てませんでしたが、開幕戦での2位は幸先がいいと思います。次戦は今月末のマルセイユですが、ここが本当の勝負かなという気がしています。全戦表彰台の目標に向かって、次の戦いも表彰台に、そしてより高いところに登れるように、気を張っていきます。今年は、勝負の年ですから!」

Indoor Trial WorldChampionship 2009
Sheffield
Final Lap(決勝)
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・HRC 7
2位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 10
3位 アダム・ラガ ガスガス 11
4位 ドギー・ランプキン ベータ 16
5位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 20
6位 ジェロニ・ファハルド ベータ 25
Qualificarion Lap(予選)
1位 アダム・ラガ ガスガス 6
2位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・HRC 9
3位 ドギー・ランプキン ベータ 11
4位 ジェロニ・ファハルド ベータ 11
5位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 12
6位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 17
7位 マイケル・ブラウン シェルコ 20
PointStandings(ランキング)
1位 トニー・ボウ 8
2位 藤波貴久 6
3位 アダム・ラガ 5
4位 ドギー・ランプキン 4
5位 アルベルト・カベスタニー 3
6位 ジェロニ・ファハルド 2