チェコでの世界選手権は、ここ数年同じ会場で開催されている。クラモリンというモトクロスのサーキットだ。セクションは、多少難易度を変更されてはいるものの(たいていはむずかしくなっていた)多くは去年使われたものと同じで、ライダーには勝手知ったるものとなっていた。とはいえ、それとトライアルのむずかしさは、またまったく別のものなのだ。
天候は素晴らしかった。よく晴れて、けれども暑すぎではなかった。しかし天候の善し悪しと、トライアルがうまくいくかどうかも、また同じではない。
このところ、3位表彰台が続いている藤波貴久。しかしその内容は、ぎりぎりまでトップ争いをしていたりするもので、結果はともかく、内容的には悪いものではなかった。そして今回もまた、3位表彰台。しかし今回は、トップ争いの結果の3位ではなく、3位争いに打ち勝って得た3位だった。
まったく乗れていなかった、と藤波は言う。試合中に軌道修正をしようにも、すべて失敗。気持ちのいいクリーンがでて、これで調子を取り戻せるかなと思いきや、次のセクションでまた失敗。そんなことをしているうち、トップ争いはどんどん離れてしまって、手が届かなくなってしまった。
今回のセクションでは、6セクションから7セクションまでが、ちょっとむずかしめだった。これ以外のセクションは、もちろんむずかしいのだが、クリーンがでる設定だった。波に乗れない藤波は、この3つの難セクション以外で、失点を重ねていく。序盤の第3セクションで5点をとってしまったから、表彰台ところか、一時は5位あたりにつけてしまう苦戦ぶりである。こんな不調は、この1〜2年、出会ったことがない。結果表からは、もっと悪いこともあったのだが、それでも内容的に、こんなに低迷したことはなかったのだ。
1ラップ後半、少し調子が上向いたかに思えた。1ラップを終えたところでは、順位は少し回復して4位。カベスタニーに、5点差だった。しかし2ラップ目に入ると、やはり同じだった。カベスタニーにも、ポイントを離されていく。
2ラップ目後半、ボウとラガのトップ争いのことは考えない。3位を走るカベスタニーは、藤波のすぐ前を走っていた。藤波はこれをきっちりマークして、とにかく3位を逃さず勝ち取ることをめざした。ライバルの点数はすべて把握しているから、戦い方としては容易だ。もちろん、ライバルの動向がわかっているというだけでは、勝てるものではない。
12セクション、カベスタニーが1点をついた。藤波はクリーン。これで、藤波に対するカベスタニーのリードは3点。13セクションは二人ともクリーン。点差は変わらず。14セクション、カベスタニーが5点を取った。これはチャンスだ。しかし逆に、ここで失敗したら、表彰台はほとんど絶望的になる。表彰台をかけたぎりぎりのトライ。藤波は、しっかりクリーンした。これで藤波が2点のリード。さらに最終セクション、カベスタニーが1点。藤波はクリーン。結局、藤波は3点差でカベスタニーを下して3位表彰台を得た。
今回は、ボウが調子を崩してラガに8点差をつけられて負けている。藤波は、そのボウに11点差の3位。いつもの藤波なら、調子を崩したボウには勝利して2位につけているところだが、今回はまったくそんな状況ではなかった。
残りは3戦。タイトルうんぬんより、今は3位の定位置から脱出したい。
「最悪です。結果はまた3位ですが、今回は3位でよかった、という戦い方でした。よかったといっても、3位を目標にして戦っているわけではないですから、うれしくもありません。こんなふうに勝負ができていない、トップ争いができない戦い方では、どうしようもない。こんな最悪のトライアルはほんとうに久しぶりですが、しかしこれもまた、ぼくの課題中の課題でもあります。もう残り3戦。今はランキングがどうこうというより、まず勝ち星がほしいです」
日曜日/Sunday | |||||
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1位 | アダム・ラガ | ガスガス | 13+7+0 | 20 | 24 |
2位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・HRC | 10+18+0 | 28 | 19 |
3位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・HRC | 18+21+0 | 39 | 18 |
4位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 13+29+1 | 42 | 18 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 22+27+0 | 49 | 16 |
6位 | マルク・フレイシャ | ガスガス | 24+26+0 | 50 | 12 |
7位 | ドギー・ランプキン | ベータ | 29+37+0 | 66 | 9 |
8位 | マイケル・ブラウン | ベータ | 51+35+0 | 86 | 7 |
世界選手権ランキング | |||||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・HRC | 168 | ||
2位 | アダム・ラガ | ガスガス | 156 | ||
3位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・HRC | 142 | ||
4位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 102 | ||
5位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 99 | ||
6位 | ドギー・ランプキン | ベータ | 97 |