バルセロナ大会から1週間。前半戦最後の1戦となるグラナダ大会は、2月9日土曜日に開催された。インドア大会では、セクションの基本となる素材は決まったものが多い。今回の大会は、通常インドアスペイン選手権で使われているセクション素材で構成されていて、スペイン選手勢には走り慣れた舞台でもある。
スタート順は、1戦ごとにローテーションしていて、今回はワイルドカードの二人に続いてはアダム・ラガが走る。次いでトニー・ボウ、ドギー・ランプキンと続いて藤波貴久。最後がアルベルト・カベスタニー。藤波にすれば、上位陣の走りをじっくり観察してから自分の走りができるから、優位なスタート順ではあった。
今回のセクションは、バルセロナ大会とはちがって、クリーンが狙えるセクションが多かった。とはいえ、上がれればよし、落ちれば5点というインドアならではの設定はそのままで、ひとつの失敗が大きく影響するのはいつもと変わらない。
最初のライダーのファハルドは7つのセクションを16点で走り終えた。ジェイムス・ダビルは最終第7セクションのみを3点で抜けたほかは全部5点。そのかわり、セクションひとつずつに苦労していないから、セクション走破時間は8分48秒。持ち時間を1分強残している。ファハルドは残り5秒だった。
ノミネートライダーでは最初のスタートとなるラガは、第3セクションまでをクリーン、第4で1点、第5で5点となった。どうやら、今回の鬼門は第5セクションのようだ。ラガの走破タイムは9分40秒。10分の持ち時間の、残り20秒だった。
ラガに続くボウは、第5セクションで5点となった以外はすべてクリーンして、5点。走破タイムは8分51秒と、これも早い。第5セクションは、走破不可能かもしれない。
続いてランプキンは、まだ乗り換えたベータとのマッチングを試行錯誤している最中なのか、ダビルには勝ったもののファハルドには6点及ばずの22点。第5セクションの他、3つのセクションで5点となっていた。
ランプキンの次が藤波の順番だ。しかし藤波は、第1セクションでいきなり1点をついてしまった。今回はクリーンできるセクションが多いから、ていねいに走る必要があると確認した矢先の失点だった。しかしその後は気持ちを持ち直して、第2から第4までをクリーン。第5セクションは、ラガやボウの走りを見て自ら5点を選択して時間をセーブした。続く第6でさらに1点献上してしまったのは失敗だったが、この第6は、藤波の想定の中では難所のポイントだった。1点で抜けられたのは、失敗ではあったが、最悪ではなかった。7セクションを7点、8分54秒で走り終えた。
最後に走ったカベスタニーは、ボウと同様に第5セクションを5点となった以外はすべてクリーンした。タイムは9分29秒だった。
この7つのセクションを走り終えた結果で組み合わされるダブルレーンは、ファハルドとランプキンが5位争い、ラガと藤波が3位争い、ボウとカベスタニーが1位争いをすることになった。このうち、ラガと藤波の争いは、これがファイナルに進出できるかどうかの瀬戸際になるから、中でももっともし烈である。
開幕戦ではボウと同じような状況でダブルレーン勝負に入り、敗退してファイナル進出を逃した。ダブルレーンも、スペイン選手権で使われているセクション素材で作られているから、スペイン人のラガには有利だ。しかし藤波は、ダブルレーンは得意である。今回はダブルレーンに勝利して、ラガとの点数を7点で同点とした。同点の場合は、セクションの走破タイムが小さいほうが優位に立つ。ラガの9分40秒に対し、藤波は8分54秒。これで藤波のファイナル進出が決まった。2008年シリーズの3戦目にして、初めてのファイナル進出。そしてまた、スペイン人以外がファイナルを走る初めてのケースとなった。
ファイナルは、クォリファイの成績順に、藤波・カベスタニー・ボウの順で、ひとつずつのセクションを走っていく。第1セクションは助走のないところから高いところに飛びつく設定で、結局、ボウだけがそこをクリーンした(セクションの持ち時間に対してのタイムオーバー1点がついている)。藤波とカベスタニーは5点だ。
続く第2セクションは、途中、谷渡りとなっているところにマシンを落とし、そこから走り進んで、最後に高いステアを登るようになっていた。谷はちょうど向こうの斜面とこちらの斜面に両輪が乗るくらいの微妙な設定だった。藤波とカベスタニーは、この谷渡りを越えて、最後のステアを攻略できず、5点となっていた。
このあと、最後に走ったボウがここで大クラッシュ。クラッシュしたのはふたりが攻略できなかったステアではなく、途中の谷渡りだった。飛び降りたのはよかったが、わずかに飛距離が足りなかったようだ。谷の向こう側に顔面から飛びついていき、さらにマシンがおいかけてきてリヤフェンダーの追い討ちをくらった。右目の上、眉間をざっくり切っていて、出血も多かった。本人も痛そうで、しかもふらふらしている。
すぐさま、ボウに応急処置がほどこされる。その間、試合は一時中断。しかし待てどもボウは帰ってこない。それで、ボウをのぞいて藤波とカベスタニーで試合が続行されることになった。
第3セクションは、ふたりともクリーンした。ボウはそこにいないので、5点がカウントされる。これで藤波とカベスタニーが10点、ボウが11点。
第4セクションは、またも難度の高いステアが現れて、藤波もカベスタニーも5点となった。しかしそこに、ボウが帰ってきた。第4を走ったボウは、眉間から出血したまま、クリーンしてしまった。これで15点の二人に対して、ボウは11点と手負いの身ながらトップにでてしまった。
その次は3人のライダーによる総当たりのダブルレーン。藤波はカベスタニーには勝ったが、ボウには負けてしまう。ボウはカベスタニーにも勝って、波に乗った。とはいえ、あいかわらず眉間からは血が滴っている。ここまでで、ボウが11点、藤波が16点、カベスタニーが17点だ。
第6セクションは3人とも5点、そして藤波にとって決定的だったのは次の第7セクション。ここを藤波は5点となって、カベスタニーは1回足つきのタイムオーバー1点で、2点で通過した。その後の第8、第9セクションは3人ともクリーンしたので、結局第7セクションで離された3点分がきいて、藤波の3位が決定した。藤波、カベスタニーとも、ケガをしてセクションひとつを走っていないボウの優勝は、阻めなかった。
しかし、ようやくファイナルを走ったという今回の一戦の意義は大きい。3人のスペイン勢(いずれもインドアチャンピオン経験者)の中に割って入るのが、まずインドアの戦いのスタートだ。その後、ファイナルでの戦いかたの駒を進めていき、成績を上げていく。
次の戦いは、藤波が最終スタートとなる。しかし一方、次のリスボンと最終戦のマドリッドはまた、スペイン勢が走り慣れたスペイン選手権の素材を使ったセクション設定となる。百戦錬磨のスペイン勢に対して孤軍奮闘の藤波貴久。インドアでのフジガスパワーは、ようやく点火した。
「ようやくファイナルを走れました。このポジションにつけられるのをまず実証して、ここからが勝負です。今回は第2セクションでクラッシュしたボウが、そうとう痛そうにしていながらも勝ってしまって、あらためてボウの強さを見せつけられてしまった結果になりましたが、しかし、あと3戦、さらに加速していきます」
Final Lap(決勝) | |||
---|---|---|---|
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・HRC | 17 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 24 |
3位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・HRC | 26 |
Qualificarion Lap(予選) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・HRC | 5 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 6 |
3位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・HRC | 7 |
4位 | アダム・ラガ | ガスガス | 7 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 17 |
6位 | ドギー・ランプキン | ベータ | 22 |
7位 | ジェイムス・ダビル | モンテッサ | 33 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ 28 | ||
2位 | アルベルト・カベスタニー | 22 | |
3位 | アダム・ラガ | 21 | |
4位 | 藤波貴久 | 16 | |
5位 | ジェロニ・ファハルド | 12 | |
6位 | ドギー・ランプキン | 8 | |
7位 | ジェイムス・ダビル | 7 | |
8位 | ジェローム・ベシュン | 1 |