2008年 インドア世界選手権第1戦マルセイユ(フランス)

2008年1月19日/Palais des Sports/観客:6000人

ボウとの一騎打ち。破れて4位に終わったが

photoいつもの年より、少しゆっくりな開幕戦。そして今年は、インドアのシリーズが全部で6戦と、いつもよりコンパクト。だから例年にもまして、1戦1戦を大事に戦わなければいけないということになる。

インドアの開幕戦を迎えて、藤波のコンディションは悪くない。年末にデモンストレーションで足を痛めて、スペインへの帰国が遅れたりというハプニングはあった。これは、治療のためもあったが、マシンに乗れないのならスペインに帰ってもしょうがないので、あまり滞在する機会のない日本でゆっくりしようという目的でもあった。日本での治療は2週間。精神的な充実を図るという点では、こういう休養も、悪くない。

さてヨーロッパのトライアルシーズンは、すでに始まっている。伝統のインドアだったシェフィールド(イギリス・近年は世界選手権のシリーズから外れている)は12月29日に開催された。ここではボウ、ランプキン(2007年なので、マシンはモンテッサだった)に次いで3位となった。

それから約半月。ランプキンはマシンをベータに替えて、藤波の世界選手権でのチームメイトはトニー・ボウひとりとなった。昨年ランキング4位だった藤波は、スタート順も後ろから4番目。ランプキンの後、カベスタニーの前で1ラップ目を走った。

第1セクションを初めてクリーンしたのは藤波だった。4セクションを終えたところまでで、ダビルとファハルドは7点、ベシュンとランプキンは9点、対して藤波は2点。5セクションはなかなかの難関で、そこまでのライダーは全員5点となっていた。そこまでのセクションも簡単ではなく時間的にも厳しくなっていた。藤波の前を走った4人のライダーは、みな2点〜5点(11分の持ち時間に対し30秒〜2分半のタイムオーバー)藤波は、第5セクションをエスケープして時間を稼ぐことにした。

その後最後の7セクションで1点をつき、さらに2点のタイムオーバーがあったので、藤波の減点は10点となった。ファハルドが18点で藤波に続いている。このあと、ラガ、カベスタニー、ボウのトップ3が登場する。

今回から4ストロークマシンに乗って登場したカベスタニーは第4セクションまでを1点で進めてきた。そして問題の第5セクション。なんとカベスタニーが難関を登ってクリーンしてしまった。しかもその後のセクションもすべてクリーン。足つき減点は第2セクションの1点のみ。タイムオーバーが3点あったのでトータルで4点。4ストロークでのデビュー戦にしてはなかなかの仕上がりだ。

つづくはラガ。ラガはシェフィールドの前に指を負傷していて、本調子ではない。しかし気合いも入っていて、第4セクションまではすべてクリーン。カベスタニーを上回る好調子だ。問題の第5も、すでにカベスタニーがクリーンしているので難攻不落セクションではなくなっている。ここで足をついて1点目。しかし手負いのラガの集中力はここが限界か、5セクションから7セクションまで1点ずつついて3点。2点のタイムオーバー減点があってトータル5点。

これでボウが10点以下の減点に抑えてきたら、3つしかないファイナルの指定席は埋まってしまう。ディフェンディングチャンピオンでありチームメイトのボウが失敗することを頼みの綱とする複雑な状況となった。

第1セクション、ボウがいきなり5点。リヤタイヤを振ったところが着地位置を失敗しての5点だった。タイトルを守る立場になって、ボウの中でなにかが乱れていたのかもしれない。第2セクションでも1点。飛び降りたときに足が出た。これは、藤波にもチャンスがある。この時点でダブルレーンは藤波とボウの戦いとなることがほぼ決まったので(成績順に、カベスタニーとラガの勝負、ボウが18点以上とらなければ、藤波と対戦するのはボウになる)、藤波はダブルレーンを走るためのウォーミングアップに出かけてしまい、ボウのその後は見ていない。ウォームアップ中に、さらにボウが5点をとったことが伝わってきた。これで、ボウは藤波の減点を上回ってしまった。

藤波10点、ボウが11点。しかしボウは、参加ライダー8人の中で、唯一タイムオーバー減点をとっていない。11分の持ち時間の中で7つのセクションをこなしてきた。こうなると、同点ならタイム差でボウの勝ち。二人のファイナル進出は、スピードレースで勝ったもの勝ちということになった。スピードレースでは、勝った方が減点ゼロ。負けると減点1点となる。そのほかに足つき減点があればその減点も加わるが、トップライダーはまず足をつかない。藤波が勝てば10対12で藤波がファイナル進出。ボウが勝てば11対11の同点で、7セクション分のタイム差でボウがファイナル進出だ。

スピードレースが始まる前、カベスタニーがやってきた。

「チームオーダーは出てるの?」

素朴な質問を投げかけるライバルである。どちらかがどちらかをファイナルに進出させるために、勝負を手加減することがあるかという疑問らしい。そんなものがあるわけがない。もし、これがどちらかのタイトルがかかっている最終戦だったら、あるいはそういうこともあるのかもしれない。しかしまだ、シーズンが始まったばかりの開幕戦だ。

ボウは、シレラ監督に言われていた。

「藤波はスピードレースで勝つために全開で走ってくる。おまえも手を抜かないで全開で走れ」

そしてスピードレースが始まった。今回のスピードレースは、スタジアムの端から端まで使った、とても長いコースだった。もちろん、難度も高い。途中までは二人のスピードはほぼ互角。折り返しポイントで、藤波が一瞬前に出た。ところが帰り道で、藤波のペースがわずかににぶった。とこをボウがついてくる。仲のいいチームメイトのガチンコ勝負だ。

結果は、あとほんの少しのところで、ボウの勝利となった。これで、ボウのファイナル進出が決まって、藤波の4位のリザルトが決定した。

走りは悪くなかったし、成績は4位と去年と代わり映えがしないものだったが、トップを守るスペイン連中と同じ土俵で勝負ができたという実感は、開幕戦の大きな実感だった。次は大事な一戦であるバルセロナ。去年は2位に入っているし、また一旗揚げたいものだと楽しみにしている藤波だ。

○藤波貴久のコメント

「結果がすべてといわれてしまえば、去年と同じでしたという結果でくやしいのですが、内容的には充実していて、手応えのある戦いでした。スペイン人の牙城に食い込んでいるという実感もあったし。今の課題は、1ラップ目にてきぱきとセクションをこなしていく走り方でしょうか。止まってためて走るというひとつひとつのアクションが、彼らは素早い。それは、こういうスタジアムを国内選手権などで繰り返し訓練してきた結果でもあると思うのですが、ぼくもそんな走り方を身につけていかなければいけません。足のケガは、ちょっと痛みがありますけど、ライディングには影響はまったくありません」

Indoor Trial WorldChampionship 2008
Palais des Sports Marseille
Final Lap(決勝)
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・HRC 8
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 10
3位 アダム・ラガ ガスガス 11
Qualificarion Lap(予選)
1位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 4
2位 アダム・ラガ ガスガス 5
3位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・HRC 11
4位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 11
5位 ジェロニ・ファハルド ベータ 19
6位 ジェイムス・ダビル モンテッサ 20
7位 ドギー・ランプキン
ベータ 26
8位 ジェローム・ベシュン ベータ 26
PointStandings(ランキング)
1位 トニー・ボウ 10
2位 アルベルト・カベスタニー 8
3位 アダム・ラガ 6
4位 藤波貴久 5
5位 ジェロニ・ファハルド 4
6位 ジェイムス・ダビル 3
7位 ドギー・ランプキン 2
8位 ジェローム・ベシュン 1