2007年 インドア世界選手権最終戦マドリッド(スペイン)

2006年3月17日/Palacio de los Deportes Madrid

有終の美、とはいかずの最終戦

なんともいただけない最終戦となってしまった。といっても、ケガをしたわけでもなく、ミラノで負った足のケガがひどくなってわけでもない。ランキングも4位を維持したし、悪い悪いということもないのだが、2回目の表彰台がほしかった藤波にすれば、4位以下でよいなどとは言っていられない。ましてや5位となれば、それは最悪の結果である。

足は、試合にはまったく影響していない。もちろんまだまだ完治はしていないし、トライアルをしたりジムでトレーニングをしたり負荷をかけると、その後に水が溜まるようでぱんぱんに腫れてくる。でも痛くはない。腫れのほうは、テーピングでぐっと押さえておけば、当面は問題ないようだ。マシンとあたる部分だけに痛みがあるので、そこにスポンジを貼ってある。06年シーズンは、人差し指の骨折からクラッチレバーにスポンジを巻いたままシーズンを走りきることになったが、07年はフレームにスポンジが藤波号の特徴になってしまうのか?

さて、今回のスタート順はくじ引きである。前半5戦はローテーションだったが、もう1回ローテーションを回すと、8戦しかないシリーズでは不公平が生じてしまう。だから残り3戦はくじ引きとなった。マルク・フレイシャ(スコルパ)とタデウス・ブラズシアク(ベータ)のワイルドカードライダーのあと、レギュラーメンバーの5人のトライ順は、アルベルト・カベスタニー(シェルコ)がトップ、次に藤波、以下、トニー・ボウ(モンテッサ)、アダム・ラガ(ガスガス)、ドギー・ランプキン(モンテッサ)と決まった。トライ順はけっしてよくないが、今回はワイルドカードにフレイシャもいるし、直前にカベスタニーが走るから、そんなに悪い順番とは考えていなかった。

ウォーミングアップも調子がよかった。いつもと変わりない。スタートに際して、藤波はよしっと気合いを入れた。今日はインドアシリーズの最後の1戦だ。今年はあんまりいいことがなかったけれど、バルセロナで得た2位をもう一度、いや、今日の調子なら、優勝してもおかしくないぞとさえ考えていた。

ところが第1セクションからが問題だ。インに高めのステアケースがあったのだが、ここをフレイシャもカベスタニーも落ちてしまった。このセクションで問題なのは、インではなくその先だったのだ。藤波に先行したライダーの中ではブラズシアクが1点で抜けたが、ブラズシアクのトライは一か八かで、3メートルほど宙を飛んで、ピンポイントで角に着地しなければいけない走り方だった。技術的にはまったくむずかしくないが、万が一にも失敗したときのリスクが大きすぎる。ブラズシアクはこわいものがなかったのかスーパーマンよろしく飛んでいったが、藤波はもう少しステディにセクションを攻めることにした。

その問題のポイント、そんなわけで前走者がいない。藤波はエアターンの最中に足をついてマシンをコントロールすることで、このポイントをクリアしようと考えた。そしてあとはそのままマシンを降ろして出口に向かえばいいところまでやってきた。そこまでの減点は1。悪くない。

ところが、エアターンが止まらなかった。そのままくるくる回ってしまって、マシンが落ちてしまった。一転、5点だ。

少し意気消沈しながら次のセクションをトライ、飛び降りのポイントで、ガシャッと異音がしたのは把握していた。しかしなんだかわかんない。それから斜めのブロックを登り、前輪をつりながら三角を越えていくポイントにさしかかった。すると、マシンが意に反して右に進んでいく。これで前輪をつっていくことなどできなくなって、あわや5点となるぎりぎりの3点でセクションアウト。実はリヤアクスルが着地の瞬間にずれてしまって、チェーン側が引っ張られてしまっていた。それで、リヤタイヤが車体に対して曲がってしまっていたのだった。マインダーは直後に状況を把握していたが、瞬時の判断で藤波には伝えないままトライを続けさせた。状況を伝えて、動揺を誘うほうが影響が大きいと考えたのだ。もちろん、どっちが正しかったかは、もうわからない。

これはパンクしたかな、ビードが落ちたかな、と首をひねりながらセクションアウトすると、メカニックが「ピットへ帰れ」と叫んでいる。今年のインドアでは、マシンは1台のみで途中の交換はできない。そのかわり3分までは修理をすることが認められている。ボウもラガもカベスタニーもこのシステムを使ってマシンの修復をしたことがあるが、藤波がこのルールの適用を受けるのは初めてだ。作業は20秒で終了。またセクションに飛びだした藤波だったが、1点で押さえようと思っていた序盤の2セクションで8点をとってしまった。

そこから2セクションはクリーンを続けての5セクション目と6セクション目。ここは難度がきわめて高く、ここは5点でもしかたないと考えていた。だからこの日のファイナル進出は、トータル10点ちょっとで争われるのではないかと踏んでいた藤波だったが、その読みはともかく、藤波自身がこの時点ですでに18点をくらってしまっている。

さらにその次の第7セクション。ここではマインダーとのちょっとした連携ミスもあった。ちょっとしたスペースで向きを変えて、指一本分の溶接部分に後ろタイヤを乗せて、そこから次のポイントにアプローチしようと考えていた藤波だったが、マインダーからOKの指示がでたとき、リヤタイヤは溶接部分になかった。それで失敗。

最後の8セクション目はクリーンセクションだったが、前のセクションで起こったことを思い出してイライラ。その気持ちを抑えるだけで精いっぱいで、1点をついたのはこの段階ではもはや最善だった。

8セクションを終えて24点。今年初めてインドア世界選手権にでるフレイシャ(スコルパ4ストロークに乗った)は20点。藤波はフレイシャのモンテッサ時代のチームメイトだから、仲がいい。久々のインドアでこれだけ走れて上々の出来だ、とフレイシャは大喜びしていたが、レギュラーメンバーの藤波よりスコアがいいのだから、大喜びもしたくなるだろう。

ところがその後、フレイシャはハイジャンプで大失敗。バーを全部落としてしまい、5点を加えてしまった。藤波はバーの上をクリアして減点ゼロ。これで藤波が逆転。ダブルレーンで藤波が勝って、かろうじて5位の座を確保して、藤波の最終戦は終わった。

自分の登場時間が終わって、藤波はひどく落ち込んだ。この日は走りそのものは悪くなかったし、調子もよかった。それなのに勝負をまとめることができなかったという点で、なんともくやしい最終戦となってしまった。

しかしともあれ、藤波の07年インドアランキングは4位。2週間後には、いよいよ本番ともいえるアウトドアの世界選手権が開幕だ。

○藤波貴久のコメント

「今日は、最悪です。調子は悪くなかったし、足のケガも、成績に影響するような感じじゃなかった。それだけに、いらだちは大きいし、落ち込みました。でも、走りそのものが悪かったわけではないので、この落ち込みをバネに、アウトドアの世界選手権で実を結ぶようにがんばります」

Indoor Trial WorldChampionship 2007
Final Lap(決勝)
1位 アダム・ラガ ガスガス 3
2位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・HRC 9
3位 ドギー・ランプキン レプソル・モンテッサ・HRC 26
Qualificarion Lap(予選)
1位 アダム・ラガ ガスガス 4
2位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・HRC 6
3位 ドギー・ランプキン レプソル・モンテッサ・HRC 21
4位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 16
5位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 24
6位 マルク・フレイシャ スコルパ 26
7位 タデウス・ブラズシアク ベータ 39
PointStandings(ランキング)
1位 トニー・ボウ 67
2位 アダム・ラガ 57
3位 アルベルト・カベスタニー 54
4位 藤波貴久 41
5位 ドギー・ランプキン 36
6位 ジェロニ・ファハルド 30
7位 タデウス・ブラズシアク 10