2006年 世界選手権第12戦ベルギーGP

2006年9月24日/Spa Francorchamps/観客数:5000人

藤波4位でランキング2位

勝って、相手の成績を待つ。ライバルの動向は気にしない。

藤波の戦い方は決まっていた。ライバルが調子がよくても悪くても、自分のベストを尽くして戦うのが、今シーズンの藤波のスタイルだ。そしてそのやり方で、フランスGP以降よい戦いを続けてきた。

最終戦ベルギーGPは、F1も開催されるベルギー西部のスパ・フランコルシャン・サーキット。会場は深い緑に包まれていて、トライアルフィールドとしてなかなかの立地。岩を投入してセクションに仕立てたものもあるが、自然のままの岩場もある。セクションは、特に藤波がきらいなパターンではない。

試合序盤は、藤波は悪くなかった。1ラップ目の5セクションまではクリーンを続けていたし、6セクションで2点をとってなお、カベスタニーに1点差の2位を守っていた。この日、ラガはスタート順が早かったという理由もあるが、どんどん先行して藤波との直接対決を避けている模様。藤波がセクションに到着したときには、ラガが残したスコアだけが残されているという状況だ。

第8セクションで、3段とも4段とも見える岩登りで、藤波はフロントを突き刺してつんのめって失敗。この日初めての5点となった。カベスタニーは1点、ラガは2点でここを通過したので、トータルではカベスタニー、ラガに次ぐ3位ということになる。

しかしいつもの藤波なら、そんな計算をすることなく、自分のベストを尽くすことに神経を集中させて順位を回復していく。しかしこの日、やはり困難な中でタイトルを取りに行くという緊迫感が、知らず知らずのうちに藤波に緊張を与えたか、最終戦は、藤波にとって毎年のように、鬼門である。それは今年も再現してしまった。

第8の5点に続いて、次の第9セクションでもヒルクライムの頂点にある岩に登りきれずに5点。これでもまだ3位をキープしていたが、トップ2には大きな差をつけられてしまった。苦戦。

1ラップ目、トップはラガの6点。カベスタニーは8点。対して藤波は18点となっていた。

ラガがこの調子だと、藤波がいくらがんばっても、タイトルのチャンスは限りなく低い。最後の最後になって、藤波本人の気持ちにもあきらめが入ってしまったのか。細かい減点を加えて、ラガとカベスタニーの独走を許してしまっている。

2ラップ目に入って、また調子を取りもどした日の藤波だった。1ラップ目に5点となった第8セクションも1点をのみで切り抜け、ラガやカベスタニーが軒並み5点となっている中で、大いに気を吐いたものだった。が、第10セクションで悪夢が起こった。ヒルクライムの頂点の岩に、ややバランスを崩しながらアプローチした藤波は、そのまま坂の下まで転倒したまま転げ落ちた。手首をややひねった様子だったが、大きなダメージもなく戦列に復帰したが、追い上げ中のこの5点は痛かった。岩でバランスを崩した際、1回足をつけば、あるいは転倒は免れたかもしれない。しかしラガに追いつくには、少々無理な体制であっても、がまんして足を出さずに切り抜ける必要があったのだ。

さらに続いて11セクションでも、1ラップ目に勢いよく登りすぎた点を修正したら、今度は勢いが足りずに登りきれず。5点。その後13セクションでも5点となって、なんとボウに1点差、日本GP以来の表彰台脱落ということになってしまった。

今シーズン、ケガや体調の問題もあって、5試合に万全の体制で挑めなかった藤波。しかしそれ以外の試合では、いずれも優勝か2位をキープして強さを遺憾なく発揮してきたが、ここへきて、今年初めて負け試合らしい負け試合をしてしまった。これも来シーズンへの課題。フランス以降、無敵の連勝街道を築いたその戦い方を、最終戦では引き出すことができなかった。タイトルを取れなかったのももちろん痛恨だが、それにもまして最終戦の闘いっぷりは、今シーズン、もっともくやしいもののひとつとなった。

最終戦高齢、ランキング表彰式で2位の座に上がった藤波だが、喜びの表情とはほど遠かったのも、いたしかたない。

なお今シーズン、藤波とランプキンの活躍で、モンテッサはメーカータイトルを獲得した。そして藤波個人は、通算7回目の世界ランキング2位を得た。7回のランキング2位は、新記録だという。

○藤波貴久のコメント

「序盤はとてもよかったのですが、試合中、ラガが調子がいいのがわかって、ライバルのことが気になってしまうという悪いパターンを久しぶりにやってしまいました。途中、もうチャンピオンはいいから、自分の走りに集中しろとシレラ監督にいわれて、そのとおりに気持ちを切り替えようとしたのですが、そうはいかなかったですね。自分が倒すべき相手が、どんどん調子を上げているのを見て、やはり気持ちを平静に保ってはいられなかったようです。今日の試合はどうしたんだとシレラ監督にも怒られました。こんな戦いをしていては来年もチャンピオンなどとれないですから、こんな試合っぷりはもう今回限りにしたいです。ランキング2位も、もういいです。来年は、チャンピオンしかありません」

フジガスに応援メッセージを!

World Championship 2006
 第12戦/日曜日/Sunday
順位 ライダー マシン L1+L2+TO Pts CL
1位 アダム・ラガ ガスガス 6+22+0 28 19
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 8+20+0 28 19
3位 トニー・ボウ ベータ 25+15+0 40 15
4位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 18+23+0 41 14
5位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 21+23+0 44 15
6位 ドギー・ランプキン レプソル・モンテッサ・HRC 22+24+0 46 14
7位 マルク・フレイシャ ベータ 31+33+0 64 8
8位 ジェームス・ダビル ベータ 37+39+0 76 6
L1=1ラップ、 L2=2ラップ、 TO=タイムオーバー、Pts=減点、CL=クリーン
ランキング
1位 アダム・ラガ ガスガス 201
2位 藤波 貴久 モンテッサ 184
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 177
4位 ドギー・ランプキン モンテッサ 169
5位 トニー・ボウ ベータ 160
6位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 131

Pix: Hiroshi Nishimaki 公式リザルト(PDF)はこちら
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