2006年 世界選手権第11戦アンドラGP

2006年9月3日/La Rabassa/観客数:3,000人

ラガには辛勝。しかし2位。

世界選手権の残り2戦。最終戦ベルギー大会を前に、今回はフランスとスペインの国境の山あいの小さな国、アンドラが舞台だ。

ポイントリーダーのアダム・ラガとビハインドは12点。チャンピオン奪還のためには、とにかく勝ちにいくしかない藤波。そのうえで、ラガが表彰台を逃がしてくれなければ、藤波のチャンピオンの目はない。

こんな状況で、チームではタイトルのことは考えないという方針が固まっていた。こちらががんばっただけでは夢はかなわないのだから、目指すはタイトルではなく、よい試合運びをすることに集中するということだ。

パドックは、2000メートル近い高地に設営された。そこからどんどん高度を稼いで、もっとも高いところでは2500メートル以上の高高度になる。山あいの、山また山の風景の中、大岩をつないでいくセクションが点在している。

最初のセクション群は、水の流れる沢筋だった。この4つのセクションは、藤波の独擅場だった。岩は高くはないが、つるつるととてもとてもよく滑る。2ラップともにこの4セクションをすべてクリーンしたのは藤波だけ。ラガは第3セクションの岩飛びから土の斜面のトラバースでライディングを乱し、カードを飛ばしてハンドルを地面につけてしまった。試合後、ラガ陣営はこれについて必死の抗議をするも、採点は変わらず。最近のラガは、試合が終わってからこんなふうにもうひと勝負しかけてくる。それだけ追いつめられているということだ。

1ラップ目の最初の4セクションをクリーンしたのは、藤波の他にもうひとり。カベスタニーだ。この日のカベスタニーは非常に落ちついてライディングしている。藤波かカベスタニー。最初のセクション群を見る限りは、この二人が好調のようだ。

ところが藤波は、この日はけっして調子がよいほうではなかったという。そして舞台を山の頂上に移した第5セクション、ここはダイナミックなセクションだったが、藤波はほんのわずかな段差を登りそこねて5点となってしまった。結果的に、この第5セクションが今回の藤波の鬼門となった。調子よく水のあるセクションをクリーンしてきて、調子を上げようというときに2ラップともここで5点となってしまったのだ。しかも2ラップ目は、思ったよりもいいバランスで難所を抜けて、クリーンができそうだったのが裏目に出た。欲がでてしまったのだ。

トップはカベスタニー。この第5セクションで1点をついたものの、そのほかはぴたりぴたりとマシンを運んでいく。カベスタニーに次いで好調だったのはボウ。藤波は1ラップ目終盤までは、ラガ、ファハルドについで、ランプキンと並んで5位につけていた。

しかし勝負は最後までわからない。ひとつひとつのセクションにベストを尽くしていくことで、結果もついてくる。調子はけっしてよくはなかったというこの日の藤波だが、1ラップ目終盤からし烈な2位争いを演じ、ラガと同点のクリーン差でこの勝負に打ち勝った。勝利は逃したが、この日のカベスタニーは5点も3点もないという、圧倒的な強さを見せた。藤波の2位は、最善の結果だったといっていいだろう。

しかし、藤波が2位、ラガが3位に入ったことで、チャンピオンシップは2点しかその差が縮まらなかった。残りは泣いても笑ってもあと1戦。この1戦で藤波は10点点差を縮めなければ、チャンピオンになることはできない。けれど今、藤波にその焦りはない。タイトルは時の運。やるべき仕事は、残り1試合にベストを尽くすことだけだ。

○藤波貴久のコメント

「沢のセクションでは足をつく気がしなかったんですけど、2ラップとも第5セクションで出鼻をくじかれてしまいました。後半も、ぽろぽろとミスがありましたけど、コースも長いし、体力的にかなりしんどかったのが原因かなと思っています。ベストの体調であっても、今日はかなりしんどい試合だったと思います。試合後、ラガは主催者のだした結果に不満があったようですが、ラガには勝てたので、悪くなかったのだと思います。チャンピオンについては、宝くじのようなものだと、チームのみんなとも話をしています。あたる確率は少ないけれど、宝くじは買わなきゃあたらない。だからぼくは宝くじを買いました。あとはベストを尽くして、当選発表を待つだけです」

フジガスに応援メッセージを!

World Championship 2006
 第11戦/日曜日/Sunday
順位 ライダー マシン L1+L2+TO Pts CL
1位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 3+4+1 8 24
2位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 8+10+0 18 21
3位 アダム・ラガ ガスガス 10+8+0 18 17
4位 ドギー・ランプキン レプソル・モンテッサ・HRC 10+6+3 19 20
5位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 12+12+4 28 17
6位 トニー・ボウ ベータ 15+27+1 43 16
7位 マルク・フレイシャ ベータ 23+32+5 60 10
8位 タデウス・ブラズシアク スコルパ 34+33+2 69 5
L1=1ラップ、 L2=2ラップ、 TO=タイムオーバー、Pts=減点、CL=クリーン
ランキング
1位 アダム・ラガ ガスガス 181
2位 藤波 貴久 モンテッサ 171
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 160
4位 ドギー・ランプキン モンテッサ 159
5位 トニー・ボウ ベータ 145
6位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 120

Pix: Pep Segales 公式リザルト(PDF)はこちら
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