2006年 インドア世界選手権第2戦フランスGP
1月13日/The pavilion Palais des Sports of Marseille/観客数:6000人
誕生日レース、かみあわず
早くも第2戦を迎えたインドア世界選手権。この日1月13日は、藤波貴久の26回目の誕生日だった。
前回優勝したトニー・ボウは、当初の予定では第2戦への出場はなかったが、ランキングのトップ4に入っているということもあり、今回もワイルドカードとして出場している。ボウ以外の、予定通りのワイルドカード参加者はタデウス・ブラズシアク(スコルパ)とジェローム・ベシュン(ベータ)。ふたりとも、このシーズンオフにマシンをスイッチ、ふたりとも、ガスガスからのマシン変更となっている。
今回、最初にセクションインしたのは、ボウだった。ワイルドカードのスタートは、ノミネートライダーよりも早い。そしてワイルドカードの中で、くじ引きによってスタート順を決めていく。ブラズシアクとベシュンとボウがくじを引き、ボウが一番くじを引いてしまったということだ。
ちなみにノミネートライダーは、昨年からスタート順が固定したままローテーションしていく。シェフィールドでは藤波がノミネートライダーの中ではもっとも早いスタートを切った。今回は前回一番最後のスタートだったアダム・ラガ(ガスガス)が一番スタートとなり、藤波、ドギー・ランプキン(モンテッサ)、ジェロニ・ファハルド(ガスガス)、アルベルト・カベスタニー(シェルコ)の順でセクションを走る。次回はカベスタニーがトップスタートだ。
さてマルセイユでの藤波は、結果的には前回と同じような失敗をおかして、ファイナルに進出することなくインドア大会を終えてしまった。しかも大きなクラッシュもしてしまった。今後に影響するような負傷はない模様だが、なかなか藤波ペースに乗れないまま、インドアシーズンは進んでしまっている。
とはいえ、トライアルにはまったく同じ状況などほとんどない。失敗は失敗だが、その内容はシェフィールドとはちがった。共通するのは、ほんとうならばいけるセクションを、ひとつふたつ落としてしまった、それが致命傷となって、成績を落としてしまっているということだ。
とにかく5点になっては影響が大きいと、藤波は5点にならない走りを心がけていた。だから第3セクションでは、自分から1回足をついてマシンを進めた。派手なインドアトライアルとは言え、クリーンだけを狙っていればいいというものではない。
問題は第5セクションだった。ここで藤波は難所にさしかかる前のちょっとしたポイントで転倒、5点。いけるはずのセクションといえばそのとおり。だが、ここでの転倒はライディングミスでもあり(ほとんどすべての転倒はミスでもあるけれど)、まだ充分に望みがあった。
次の第6セクション。ケーブルコアで構成されたこのセクションは、最後がコアを順に飛び降りて着地するものになっていた。ここにはふたつの走り方があった。頂点から床まで、一気に飛び降りてしまう方法と、途中のコアに後輪を着地させ、衝撃を和らげながら降りてくる方法だ。藤波の前にトライしたボウは、ダイレクトに一気に飛び降りていた。しかしさすがに衝撃が大きく、バランスを崩して1点をつくおそれもある。やはり藤波の前にトライしたラガは、後輪をあてて降りてきた。藤波は途中のコアに接触しながら降りてくる方法をとった。
ところがなんと、藤波が後輪をコアに接触させた瞬間、前輪が一気に下を向いてしまった。フロントが下がってまま地面に向かって落ちていった藤波は、前転をするようなかたちで、このセクションを転倒で終えることになった。衝撃は相当なもので、手首が折れたかと思ったというほどの衝撃を味わうことになったが、このセクション、ここまでは1点で来ていたし、転倒した最後のポイントは、技術的にはむずかしいものではなかったはずだから、この5点は藤波にとっては、手首の傷みに増して痛いものになった。
手首は痛かったが、残るふたつのセクションを1点でこなして、12分の持ち時間を有効に使って残り10秒、藤波のクォリファイの8セクションが終わった。
藤波に先がけて、ボウが10点、ラガが7点とっていたから、ボウの10点を上回れば、ファイナルへの進出は可能かと事前に算出していた藤波だったが、クォリファイを終えて14点では、いささか風向きが悪い。その後、ファハルドが藤波の鬼門だったケーブルコアをなんでもなく降りてきて4点、カベスタニーが6点でクォリファイを終えて、藤波の5位が確定した。
藤波のあと、ランプキンはさらに悲劇的な試合となってしまった。藤波が5点になった第5セクション、ランプキンは藤波が5点になったポイントは通過し、その先で大クラッシュ。約2メートル半はあるかという落差を、背中から落ちてしまった。しかもランプキンの上にはマシンが乗ってしまうという悲惨さで、顔色も失い、ここで呼吸を調えるのに数分間を擁してしまった。もちろんセクションのトライは無理。残るセクションはインをして5点をもらうだけという状況になって、後半4セクションをすべて5点。ランプキンのクォリファイポイントは24点。ベータに乗り換えてちょっと生き生きしているベシュンが29点だから、きわどいところで6位をキープしたというところだ。
クォリファイのあと、最後の決戦が、ダブルレーン(よーいドンの競争)だ。1位と2位、3位と4位で勝負となる。5位の藤波は6位のランプキンと勝負だが、藤波は、ここで勝っても5位、負けても5位。たいしてランプキンは、ここで負けた上に万が一5点になってしまっては、ベシュンに逆転を許すことになる。藤波は、悲劇の主役になってしまったかつての王者のために、ダブルレーンはランプキンのペースに合わせて少しだけゆっくり走り、
ランプキンに負けてもう1点を加えて、ボウに5点差の15点で5位という成績を受け取ったのだった。
確実にいけるセクションを走り、5点にならずに減点を押さえる。トライアルの勝負のセオリーだが、インドアの場合はセクション数が少ないために、そのセオリーはさらに重要になる。今シーズンはノミネートされたライダーの他、突然(スペイン選手権の成績を見ても、インドアが得意なのは周知だったのだが)現れたボウが開幕戦からいつもとはちがうペースを作っている。チャレンジャーとなった藤波は、不調の同僚ランプキンとともに、まだ苦しみの中にいる。
○藤波貴久のコメント
Indoor Trial WorldChampionship 2006
Marseille |
Final Lap(決勝) |
1位 |
アダム・ラガ |
ガスガス |
17 |
2位 |
ジェロニ・ファハルド |
ガスガス |
20 |
3位 |
アルベルト・カベスタニー |
シェルコ |
21 |
Qualificarion Lap(予選) |
1位 |
ジェロニ・ファハルド |
ガスガス |
4 |
2位 |
アルベルト・カベスタニー |
シェルコ |
7 |
3位 |
アダム・ラガ |
ガスガス |
8 |
4位 |
トニー・ボウ |
ベータ |
10 |
5位 |
藤波貴久 |
レプソル・モンテッサ・HRC |
15 |
6位 |
ドギー・ランプキン |
レプソル・モンテッサ・HRC |
24 |
7位 |
ジェローム・ベシュン |
ベータ |
29 |
8位 |
タデウス・ブラズシアク |
スコルパ |
33 |
PointStandings(ランキング) |
1位 |
アダム・ラガ |
18 |
2位 |
トニー・ボウ |
15 |
3位 |
ジェロニ・ファハルド |
14 |
4位 |
アルベルト・カベスタニー |
11 |
5位 |
藤波貴久 |
8 |
6位 |
ドギー・ランプキン |
6 |
7位 |
ジェローム・ベシュン |
2 |
|
ジェームス・ダビル |
2 |
9位 |
タデウス・ブラズシアク |
1 |
|
シャウン・モリス |
1 |
pix: Pep Segales(SoloMoto) & Worldtrial.com |
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