2005年 トライアル・デ・ナシオン

2005年9月25日/SESTRIERE ITALY

日本チーム、トップ争いを演じつつ、結果は3位

世界選手権最終戦の1週間後、世界ランカーの面々は、イタリアのセリトリエールに集結した。この冬には冬季オリンピックの会場となるこの地が、今年のデ・ナシオン会場だ。

今年の日本チームは藤波貴久をはじめ、黒山健一(ベータ)、野崎史高(スコルパ)、渋谷勲(スコルパ)の4人。渋谷はスポット参戦だったが、4人とも、今シーズンの世界選手権を戦った仲間である。

昨年の結果から抽選となったスタート順は、一番最後がイギリス、日本は最後から2番目となり、スペインが3番目。スタート順が遅いほうが有利なのが常だから、日本やイギリスはスペインより優位に立ったかに思われた。スタート時のお天気は、なかなかの快晴。スキー場となる山の上のほうまで、よく見渡せていた。

セクションは、大小の岩が組み合わさって、けっして難度は低くないが、しかしトップチームにとっては、多くがクリーンで抜けられるものだった。4人のうち誰かがミスをすれば、そのミスを他の3人がいかにカバーするかというチームワークが、TDNの勝負ではとても重要になる。

今回日本チームとして戦うのは、ライダーの他にはジョセップ、アレックス、サンティの藤波のいつものマインダーの他、黒山チームの一郎さん、二郎くん、野崎チームはグレッグ、渋谷には前回フランス大会のときと同様、フランスマインダーがつく。ほかに、スタート直前にマシンを調達した三谷知明が、各チームの点数を把握すべく、走り回る。

今回、イギリス、スペイン、日本の3チームには、それぞれデ・ナシオン初参加の選手がいる。シャウン・モリス、トニー・ボウ、そして渋谷勲だ。ボウはすでに世界選手権のトップライダーだから、新顔というそぶりは見せず、がんがん走る。渋谷は風邪をひいて体調を崩していたが、なかなか切れ味のいい走りを披露する。モリスは、さすがにイギリスを背負って走る重圧感を漂わせていたが、ランプキンのチームの面々によくフォローされて、クリーンも多く叩き出していく。このチームワークがイギリスの最大の特徴だ。

18セクションもの1ラップを終えて、トップはイギリス。減点はなんとたったの5点だった。2位がスペインの9点、日本はスペインに1点差の10点だった。しかし1ラップ目後半になって、突然天候が崩れてきた。最初はひょうが降ってきて、少しのち、本格的な雨になった。雨は降ったりやんだりだったが、濡れた岩は強烈に滑り、トップライダーをしてまったく攻略不可能なものも出てきた。こうなると、5点の点差は大きな問題ではなくなってくる。

2ラップ目、1ラップ目のクリーン合戦とは打って変わって、トップライダーが足をつきながらの戦いが始まった。2ラップ目になってセクションが難易度を増したわけなので、下見も長い。持ち時間が苦しくなる中、後半になって、いったん止んでいた雨がまた降り始めた。日本は13セクション、スペインは14セクション、イギリスは12セクションにいた。12セクションはおおむねクリーンがでている。しかし13セクションは、この3チーム以外のすべてのチームがエスケープしていて、スペインは難度が増したこのセクションを走る最初のチームとなった。結果、ラガ以外がすべて5点。減点10。日本は渋谷が3点、藤波がクリーンをした。減点8。イギリスはコナー以外がここを抜けて、6点。

さらに次の14セクション、スペインは最後に走ったラガだけが5点でトータル3点だったが、状況は刻々と悪くなっていた。日本は全員が5点。岩盤の上から次の岩に飛びつくところで、まったく加速できない。日本のあとを走ったイギリスチームも全員が5点だった。ここが、最後の勝負どころだった。

 最終18セクション、日本は、時間がなくなっていた。デ・ナシオンでは、全員のタイムの遅れが加算されるから、タイムオーバーペナルティは、いつもの試合間隔よりも大きくなる。タイムオーバー、7点。イギリスとスペインは、ぎりぎりでタイムオーバーなく、試合を終了している。

結果、タイムオーバーを加算しない時点で、日本は3点差でイギリスに敗れていた。スペインとは22点差、数字的には、完敗だった。最後の時間配分と、天候の変化による難易度の急変は誤算だった。しかし途中経過を見れば、日本は確実にトップ争いを演じていた。今回の勝負は、今後の日本チームの戦いに、大きな進化を与えるにちがいない。

○藤波貴久のコメント

「2ラップ目の14セクションは、どうやっても加速できませんでした。ぼくらが見ているところでトライしたラガも5点だったし、微妙な雨の降り方が、勝敗を分けてしまった感じです。でも、今回は日本チームとして、しっかり戦ったという印象です。試合をしたなという満足感があって、結果はいつもの3位ですけど、ライダーとしてはなかなかの充実感でした。結果が同じなのは申し訳ないですが、みなさんの応援に感謝します。ありがとうございました」

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Trial des Nations 2005
1位 スペイン(ボウ+カベスタニー+フレイシャ+ラガ) 9+24+0 33 115
2位 イギリス(コナー+ジャービス+ランプキン+モリス) 5+40+0 45 103
3位 日本(藤波+黒山+野崎+渋谷) 10+38+7 55 99
4位 イタリア(ボシス+レンツィ+マウリノ+オリッツィオ) 36+83+0 119 70

Pix:Hiroshi Nishimaki 公式リザルト(PDF)はこちら
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