2005年 世界選手権第8戦イギリス

2005年7月31日/Hawkstone Park

あと一歩、くやしい2位

イタリア大会から3週間、その間、ドイツで開催されたワールドゲームズに参戦し、日本の銅メダル獲得に貢献し、すぐその翌週の世界選手権となった。

会場はモトクロスコースでもあるホークストンパーク。セクションの設定をしたのはドギーの父親のマーチン・ランプキンだったが、土曜日にまとまった雨が降り、晴れ設定のセクションはどれもむずかしく、トップライダーが3点で抜けるのもどうかというとびきりのむずかしさとなっていた。これでは試合にならないのは主催者側も承知していて、セクションの設定はしきりなおし。日曜日に特別処置としてもう一度下見の時間が与えられ、選手はウォーミングアップ前に、全セクションを再度下見することができた。今回は、世界選手権の去年からの流れである一日制へのトライが採用され、日曜日1日だけの世界選手権だ。

【日曜日】

設定が変更されたといっても、あいかわらず難度は高かった。リザルトの減点数を見ても、それは明らかだ。それでも、土曜日の設定に比べるとだいぶやさしくなったということだから、もともとの設定がいかにむずかしかったかがわかる。日曜日は雨は止んでいたが、土曜日の雨でぐしゃぐしゃになっていて、トライアルらしい泥と水との闘いが予想された。

トップ4人が人グループになったくじ引きでは、藤波がもっとも悪い(早い)くじを引いた(くじ引きは、全ライダーをいくつかのグループにまとめ、最初にユース、ジュニア、世界の順にスタートするが、それぞれ、ポイントのあるなしやランキング順で6人弱のグループごとにおこなわれている。藤波は、一番最後にスタートすることもあれば、今回のように最後から4番目にスタートすることもある)。今シーズン、最強の闘いを演じているドギー・ランプキン、アダム・ラガ、アルベルト・カベスタニーの3人とは、ほぼ同じ時間帯を走るが、みんなと一緒に走っていたのでは、藤波がもっとも時間的に厳しいことになる。彼らに先行して走らなければいけなかったのは、ちょっとハンディではあった。

しかし1ラップ目の藤波は、自身も充分納得できるレベルの高いものだった。2位のカベスタニーに5点差でトップ。本人曰くは、1ラップ目の後半には少しくずれたということだが、結果表から見てとれるのはランプキンも5点となった13セクションで5点となっているくらいで、大きな崩れではない。ぜひとも勝ちたい一戦で、藤波は気持ちを引き締めて、確実にセクションを走破していた。

2ラップ目も、5点にならないように心がける藤波のトライは続いた。クリーンと1点の点差は1点だが、5点になってしまったら、3点との間にも2点のギャップがある。もちろんクリーンは狙いつつも、5点を抑えることが、勝利の鍵と見た藤波だった。

2ラップ目前半は、やや減点が多かったが、しかし5点を極力減らして勝利に向かうという点では、悪くない戦果だった。ところが第8セクションで、ちょっとしたアクシデントが起こった。ブーツにテープがひっかかり、テープが切れてしまったのだ。テープを飛び越えて、セクションの外に足をつくのは1点以上の減点にならないが、テープを切ってしまっては、それがマシンでもライダーでも、確実に5点となる。

ランプキンはこのセクションをクリーン。ここが勝負の分かれ目だった。2ラップめに快進撃を続けたランプキンが、1ラップ目を12点も上回る好成績で終えて、2点差で藤波を下して勝利を得た。藤波は、どうしても勝ちたい一戦で、チームメイトに勝ちを譲ってしまった形となった。結果的には、2ラップ目の第8セクションを1点か2点で抜けていれば勝利は藤波のものだった。その理由がテープを引っかけての5点だから、藤波にすればなんとも納得しかねる敗戦となった。

しかし、地元での大会は、ライダーにとってこれまたなんとしても勝ちたい一戦である。藤波にも、ランプキンが地元で勝ちたい気持ちはわかる。ゴールでは、藤波は心からランプキンの勝利を祝福することができた。

この大会、チャンピオンシップのライバルであるラガは4位。ナチュラルな設定のセクションとなって、ひところの破竹の勢いが影を潜めた印象だが、17点差から13点差まで詰め寄ることができた。残りはドイツが2戦とベルギーが1戦。ぎりぎりの終盤戦に突入した。

○藤波貴久のコメント

「とても惜しい試合でした。負けた理由が、テープを足で引っかけてしまったという、そんな理由なのかというのは納得しがたいものがありましたが、勝ったのがチームメイトのランプキンだし、ランプキンは母国での試合だったし、ラガが勝たれるよりよかったなと気持ちを入れ替えて、すぐにランプキンを祝福できました。残り3戦ですが、ぼくはもう勝つしかないんで、勝利に向けて進むだけです」

フジガスに応援メッセージを!

World Championship 2005
Hawkstone Park
 日曜日/Sunday
順位 ライダー   L1 L2 TO Pts CL
1位 ドギー・ランプキン モンテッサ 36 12 0 50 11
2位 藤波貴久 ホンダ 27 24 1 52 10
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 32 35 0 67 9
4位 アダム・ラガ ガスガス 38 33 1 72 7
5位 トニー・ボウ ベータ 39 29 5 73 9
6位 マルク・フレイシャ モンテッサ 46 24 4 74 7
7位 グラハム・ジャービス シェルコ 52 29 2 83 6
8位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 52 32 2 86 4
9位 黒山健一 ベータ 47 36 4 87 3
10位 ジョルディ・パスケット ガスガス 57 44 0 101 3
11位 タデウス・ブラズシアク ガスガス 59 49 0 108 2
12位 シャウン・モリス ガスガス 64 53 0 117 2
13位 サム・コナー シェルコ 63 52 4 119 3
14位 野崎史高 スコルパ 66 54 2 122 2
15位 スティーブ・コリー ガスガス 65 61 1 127 1
L1=1ラップ、 L2=2ラップ、 TO=タイムオーバー、Pts=減点、CL=クリーン
ランキング
1位 アダム・ラガ ガスガス 195
2位 藤波 貴久 ホンダ 182
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 178
4位 ドギー・ランプキン モンテッサ 173
5位 トニー・ボウ ベータ 136
6位 マルク・フレイシャ モンテッサ 131

Pix:Mario Candellone 公式リザルト(日曜日)(PDF)はこちら
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