2005年 世界選手権第7戦イタリア

2005年7月9〜10日/Valbondione

2日目勝利。追撃開始!

悪夢のようなフランス大会の2日間を終えて、タイトル争いは微妙な展開となってきた世界選手権後半戦。しかし藤波貴久は、まだまだ2年連続チャンピオンを目指して戦いを続けている。もちろん、勝算があるからこその闘いだ。イタリア大会は、ここ数年恒例となったきたイタリアでの開催。バルボンディオーネでの開催は初めてだが、北イタリアは、まだまだトライアル会場の宝庫のようだ。週末の天候は雨が降ったりやんだりの、きわめて不安定なものだった。この天候の中、試合は進められた。

【土曜日】

フランスでは、斜面に人工的に配置された岩々でセクションが構成されていたが、今回イタリア大会は、川筋にセクションが設けられていて、自然の中のトライアルが復活していた。ナチュラルなセクション、と藤波は言う。アウトドアトライアルは、やはり自然の地形に設定されたセクションで争われるのが似合っている。

今大会は、岩盤が多かったが、その岩の多くが、磨き石のようにつるつるしている。いかにも滑りそうだし、実際につるつるとよく滑った。川のセクションは5〜6セクション設けられていた。それ以外は、川の脇の土の斜面や岩盤に設けられていた。セクション設定として、ライダーにはお気に入りのものだった。しかし、全体的に滑る。いいセクションが、走りやすいということではない。

土曜日は、雨は降ったりやんだりだったが、雨に濡れた岩盤は、最後まで乾くことがなかった。コンディションとしては、一日中ウェットだったわけだ。

藤波は、前回フランス大会について、シレラ監督ともミーティングを重ねたが、やはり結論は「フランス大会の悪いイメージは忘れて、新たな気分で今後の試合に臨もう」ということになった。実際、練習をしていても悪い雰囲気はまったくないし、マシンについての不安も不満もない。フランスでの反省点を洗い出すのは重要だが、フランスのイメージに引きずられるのはいい策ではない。

1ラップ目、藤波は滑るセクションを考え、5点を可能な限り回避する作戦に出た。あぶないと思ったら、早めに足をついてマシンを押しだすようにした。この5点を減らす作戦が功を奏したか、1ラップ目はトップ。感触も、悪くなかった。

2位はアダム・ラガ。3点差だ。2ラップ目、ラガの好調が伝えられてくると、藤波は1ラップ目の作戦を少し変更した。もちろん5点をとってはいけないが、もう少しクリーンを狙って、攻めのトライをしなければいけないと考えたのだ。しかし。

結果的には、その作戦が藤波にやや空回りを強いてしまった。とらなくてもいい5点をいくつか献上して、1ラップ目より減点を1点増やし、ラガに逆転を許して2位に甘んじてしまった。ラガに破れた事実を知らされた藤波は、さすがにくやしい思いに包まれたが、しかしその減点数は9点差。2ラップ目については、11点もの差がつけられている。これでは、藤波の空回りが少々うまくいったとしても、なかなか詰め寄れる差ではない。

敵ながらあっぱれ。今回のラガは、それだけ乗れていた。くやしいが、今回の2位は、いたしかたないといったところだ。スペイン勢2名に水をあけられている藤波にすれば、カベスタニーに1点差で2位となれたことが、今回の収穫だった。

【日曜日】

土曜日に2位となって、ラガの前、ほとんど最後のスタートとなった藤波は、すべてのライダーのトライを見守ってからセクションインするという、チャンピオンらしく試合を組み立てていた。

雨は、朝まで降り続いたが、藤波らがスタートする頃になって上がりはじめた。雨が上がることによって、セクションコンディションも変わってくるにちがいない。この天候の変化が、勝敗にどう影響してくるか……。

雨が上がった中、試合を進めるトップライダーたち。藤波たちが第4セクションに到着したとき、なんと太陽が顔を出し、つるつるに光った岩を乾かしはじめた。第4セクションは、土曜日とはセクションに変化がない。藤波は前日にもクリーンしているし、藤波の前にトライしたフレイシャら、クリーンを叩きだすライダーも珍しくない。

ところが、ここで藤波は、途中の岩でタイヤを滑らせ、ここで5点になってしまう。思った以上の滑りかただった。仮に岩が乾いてグリップがよくなったとしても、その岩に到達するまでに、タイヤはしっかり湿気を含んでいる。水分や湿った土がタイヤと岩の間に潜り込み、それがグリップを致命的に悪くしていた。天気が回復しても、それが条件を良くする結果にはならなかった。

藤波の失敗を見て、次にトライしたラガは、無難に3点でここを通過した。藤波の5点は、雨の上がりかたと太陽の輝きかた、そしてタイミングの、微妙な罠となってしまった。

その後も、藤波はたびたびアンラッキーに襲われた。5点は全部で3つ。前日、ラガのベストスコアは5点だった。雨が上がって、藤波の1ラップ目の減点は23点。また、藤波に悪いイメージがよみがえりかけたのだが、そこに、戦況が伝えられた。

トップはファハルドで21点、2位がフレイシャで22点。藤波は3位だった。「こんなに5点をとってしまっているのに3位? アダムやカベスタニーはどうしたの?」藤波が問えば、その答えは「ラガもカベスタニーも、おまえの後ろだ」とのものだった。

これは、いけるかもしれない。ここからぐっと我慢の走りをしていれば、可能性は大きい。藤波は、気を引き締めなおして2ラップ目にとりかかった。試合は、スタート順のまま、藤波はラガを従えて回っていた。「アダムの前に出ること」が藤波の命題である。ラガの点数は把握できていたから、5点以上のアドバンテージを持っているのも、試合中の藤波は把握していた。

そして最終セクション、藤波は、少し意外なアドバイスを監督から受けた。「今はトップだが、ここで5点をとると、3位まで落ちる可能性がある」。最終セクションは、少なからず失敗が多いポイントでもあった。ただ、3点で抜けるのなら可能性はうんと広がるし、それでも勝利できるのだから、戦況はそんなに緊迫したものではない。それでも藤波は、このアドバイスにさらに気を引き締めて、最後のセクションを走り、そして勝利を手にしたのだった。

○藤波貴久のコメント

「2日間を終えて、ランキングの点差を見たら、17点。まだ17点もあるのか、と思ってしまいましたが、今回の大会はいいイメージで終えることができました。日曜日の2ラップ目の10点はいい感じだったと思います。この調子で、ぼくが勝ってアダムが4位とか5位に落ちれば、その一回で7点とか9点の挽回が可能です。あとまだ4戦もありますから、きっちり挽回していこうと思います。最近は、やはりマークするのはラガですね。シーズンの初めは、去年までマークしていたランプキンがマークの対象に見えなくて、試合の流れをつかむのに苦労していましたが、もうマークすべきはラガに特定されました。ラガも今回のように滑るところで勝利していますから、あなどれません。残りの試合、がんばります」

フジガスに応援メッセージを!

World Championship 2005
Valbondione
土曜日/Saturday
順位 ライダー   L1 L2 TO Pts CL
1位 アダム・ラガ ガスガス 19 5 0 24 18
2位 藤波 貴久 ホンダ 16 17 0 33 16
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 20 14 0 34 15
4位 ドギー・ランプキン モンテッサ 29 15 0 44 15
5位 トニー・ボウ ベータ 24 26 0 50 13
6位 マルク・フレイシャ モンテッサ 24 29 0 53 12
7位 黒山 健一 ベータ 40 25 0 65 8
8位 グラハム・ジャービス シェルコ 41 27 0 68 7
9位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 42 31 0 73 13
10位 タデウス・ブラズシアク ガスガス 49 39 0 88 7
11位 ジョルディ・パスケット ガスガス 45 45 0 90 7
12位 シャウン・モリス ガスガス 52 39 0 91 7
13位 ダニエル・マウリノ ガスガス 57 36 0 93 5
14位 野崎 史高 スコルパ 51 43 0 94 5
15位 渋谷 勲 スコルパ 54 41 0 95 7
L1=1ラップ、 L2=2ラップ、 TO=タイムオーバー、Pts=減点、CL=クリーン
日曜日/Sunday
順位 ライダー   L1 L2 TO Pts CL
1位 藤波 貴久 ホンダ 23 10 0 33 18
2位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 21 15 0 36 15
3位 ドギー・ランプキン モンテッサ 26 11 0 37 17
4位 アダム・ラガ ガスガス 28 13 0 41 15
5位 トニー・ボウ ベータ 27 18 0 45 14
6位 マルク・フレイシャ モンテッサ 22 27 0 49 12
7位 黒山 健一 ベータ 33 28 0 61 11
8位 グラハム・ジャービス シェルコ 31 33 0 64 11
9位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 29 36 0 65 8
10位 タデウス・ブラズシアク ガスガス 52 41 0 93 4
11位 ジョルディ・パスケット ガスガス 49 48 0 97 6
12位 渋谷 勲 スコルパ 55 42 0 97 4
13位 シャウン・モリス ガスガス 48 51 0 99 6
14位 野崎 史高 スコルパ 49 51 0 100 8
15位 ダリオ・デレー・レ・ガンディーネ モンテッサ 47 56 0 103 6
L1=1ラップ、 L2=2ラップ、 TO=タイムオーバー、Pts=減点、CL=クリーン
ランキング
1位 アダム・ラガ 182
2位 藤波 貴久 165
3位 アルベルト・カベスタニー 163
4位 ドギー・ランプキン 153
5位 トニー・ボウ 125
6位 マルク・フレイシャ 121

Pix:Mario Candellone 公式リザルト(土曜日)(PDF)はこちら
公式リザルト(日曜日)(PDF)はこちら
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