2005年 世界選手権第5戦アンドラ

2005年6月19日/Sant Julia de Loria

パンク、パンクで勝利をのがす

日本、アメリカと相性のいい連戦で見事ランキングトップを奪った藤波貴久。ヨーロッパラウンドで、いよいよタイトルへの道を確定的にしたい。その第一弾が、アンドラだ。

土曜日はスペイン選手権(ラガなど、トップクラスのライダーのクラスはなかった)が開催され、今回の世界選手権は日曜日の1日のみ。昨年アンドラとスペインでのみおこなわれた試みだが、今年はより多くの国で採用されているシステムだ。

スタート順のくじ引きは、ばっちり。藤波はもっとも最後のスタート順を手に入れた。すべてのライダーの動向をしっかり見ながら試合を進められるポジションを得たわけだ。

毎年同じ町で開催されているアンドラ大会だが、セクションを設営するエリアには数ヶ所があって、毎年その中からいくつかをチョイスして15セクションを用意している。今回は第1から第7までが沢の中のセクションだった。この沢の中の岩が、つるつるとよく滑った。そして今回は、第1セクションからがいきなり難所だった。水の中から斜めに飛び上がって大岩に飛びつくもので、うまくいければ減点1で走破可能、失敗すれば5点だ。ここを藤波はうまく走破して1点。1ラップ目に1点でここを抜けたのは藤波とランプキンの二人だけだった。幸先のいいスタートである。

スタート順は一番最後だったから、誰をマークしても時間には問題がないことになる。走りを見る限り、調子がよいのはランプキンのように見えた。そこで藤波は、ランプキンをマークして試合を進めることになる。ランプキンも藤波も、それぞれ細かい減点を積み重ねているが、ライバルに対してはややリードをとっている。ランプキンをマークしてトライを進めていた第7セクション、ここで藤波はランプキンの失敗を見た。藤波はここを2点、ランプキンの5点に対して、小さくないアドバンテージをとった。

この頃から、みんな時間がなくなって焦りはじめてきた。藤波はライバルに比べれば時間には余裕があるが、それにしてもたっぷり時間があるわけではない。第8セクション以降は乾いた岩のセクション。夏に入ったヨーロッパの暑さは今年も一級。午前中から早くも30℃を越えて、灼熱地獄だった。しかし藤波は、日ごろのトレーニングの成果か、この暑さもびくともこたえない。

そして迎えたのが14セクション。ひとつめに段差を越えて、さらに登っていくセクションだったが、ここが登れない。なんで上がれないんだと後ろを振り返ると、そのときリヤタイヤは見事にパンクしてぺっしゃんこになっていた。ひとつめの岩越えですでにパンクしていたのだが、外から見ているマインダーのジョセップらはすぐにそれとわかったらしいが、当の藤波が事態に気がついたのは、登れるはずのポイントに失敗した、その瞬間だった。この5点で、1ラップ目のトップはランプキンに逆転された。1ラップ目を終えて、ランプキン21点、藤波は2点差でこれに続いている。まだまだ、この5点は許容範囲だ。

しかし2ラップ目に入ってすぐ、再び悪夢がおとずれた。第1セクションだった。今度は1ラップ目とちがって、世界のトップライダーはこのセクションの攻略法を会得してきている。カベスタニーが2点、ボウ、ランプキン、ラガが1点、フレイシャはなんとクリーンまで叩きだしていた。もちろん藤波も、1ラップ目にすでにここを攻略しているので、自信を持ってこのセクションに挑んだ。ラインも完璧にのっていた。ところが……。

またしても、パンクだった。状況は14セクションと似たようなもので、小さな岩から大岩に飛びつくのだが、その小さなきっかけ岩のとんがりに、リヤタイヤが悲鳴を上げた。完璧に下見どおりにマシンを運べたので、ライディングに後悔はない。しかし結果は残念なものになった。

その後は、特に大きなミスもなく、藤波は試合を進めた。2ラップ目はラガが絶好調だったが、そのラガに対して藤波の2ラップ目の減点は5点増し。そのうち4点が第1セクションのパンクゆえのものだから、実質的にはラガに対して1点多く減点しただけということになる。しかし、パンクの代償は大きかった。この日、アンドラの日中温度は38℃まで上がった。ライバルたちがあまりの暑さに一休みしたり腕をマッサージしてもらったりしながら試合を進めていく中、この日の藤波にはまったく問題がなかった。アンドラ大会は、毎回ハードな大会となるものだが、今年はまったくそんな印象がなかった。藤波のフィジカルポテンシャルが、それだけ上がっているということだろう。それだけに、2回の不運が、なんとも惜しまれることになった。

優勝ラガに対して、同点クリーン差でランプキンが2位、3点遅れてカベスタニーが3位。藤波はカベスタニーよりクリーン数2つ多いものの、1点差で表彰台をのがして4位に甘んじた。

これでランキングは、ランプキンにトップを奪われて藤波は2位。しかもラガとカベスタニーに同点で並ばれている。試合の結果もタイトル争いも、4人がまったく横一線という印象だ。

しかしこれで、ポルトガル、スペイン、そしてアンドラと、スペイン勢のホームの大会は終了する。メンタル的に手ごわいのはやはりランプキン。そのランプキンのホームレースのイギリスは1日制。まだまだ、流れは藤波に向いている。藤波の信念は揺るぎなく、タイトルに向けて進んでいる。

○藤波貴久のコメント

「アンラッキーな1日でしたね。ライディングは悪くなかったし、からだの調子はまったく問題なかった。それだけにまったく残念ですけど、2回のパンクがすべてという感じです。2回のパンクのうち、せめてどちらかひとつだったらと、その点もアンラッキーに輪をかけた感じです。パンクはビードが落ちるようなものではなかったのですが、どちらのセクションでも、グリップが重要だったので、あっという間にぺしゃんこになってしまったタイヤでは、どうしようもありませんでした。ポイントリーダーの座を奪われたので、もちろん気分は悪いですけど、点差はないし、大丈夫です。見ていてください」

World Championship 2005
Sant Julia de Loria
 日曜日/Sunday
順位 ライダー   L1 L2 TO Pts CL
1位 アダム・ラガ ガスガス 24 10 0 34 16
2位 ドギー・ランプキン モンテッサ 21 13 0 34 15
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 24 13 0 37 14
4位 藤波貴久 ホンダ 23 15 0 38 16
5位 トニー・ボウ ベータ 28 13 0 41 16
6位 マルク・フレイシャ モンテッサ 31 17 5 53 15
7位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 28 25 2 55 10
8位 ジョルディ・パスケット ガスガス 45 28 0 73 7
9位 グラハム・ジャービス シェルコ 40 34 0 74 3
10位 タデウス・ブラズシアク ガスガス 41 33 0 74 3
11位 黒山健一 ベータ 40 41 3 84 8
12位 野崎史高 スコルパ 41 41 3 85 5
13位 ジェローム・ベチューン ガスガス 54 44 0 98 4
14位 サム・コナー シェルコ 63 42 0 105 3
15位 シャウン・モリス ガスガス 58 44 4 106 5
L1=1ラップ、 L2=2ラップ、 TO=タイムオーバー、Pts=減点、CL=クリーン
ランキング
1位 ドギー・ランプキン 111
2位 藤波 貴久 109
3位 アダム・ラガ 109
4位 アルベルト・カベスタニー 109
5位 マルク・フレイシャ 80
6位 トニー・ボウ 77

Pix:Mario Candellone 公式リザルト(日曜日)(PDF)はこちら
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