2005年 世界選手権第2戦スペイン

2005年4月24日/Tarragona

気運高まらず、しかし……

最悪の開幕戦となったポルトガル大会から1週間、世界選手権はポルトガルのお隣、スペインに移って開催された。今回の開催地はアルベルト・カベスタニーの出身地であるタラゴナ。セクションはすべて海岸線に設けられていて、すべてのセクションの素材が同じ。街の中でギャラリーには見やすい設定とはいえる。

藤波貴久は、この大会で4位に入った。優勝のアダム・ラガ、地元のカベスタニー、3位のマルク・フレイシャ。3人ともがスペイン勢。今回は、スペイン勢の得意パターンに翻弄されてしまった。

3位フレイシャに11点差。いくつかの不運や納得のいかない試合運営などはあったものの、それにしても、この11点差は小さくない。今回に限って、藤波はスペイン勢への完敗を認めざるを得なかった。

海岸に設けられたセクションは、セクションとしてこれでよいのかと疑問のあるものだった。設定そのものはともかく、強い波が押し寄せてきて、クリーンをするしない以前に、波にさらわれないようにしながらトライをするという、いつにない苦しい大会となった。波の引くのを待って、次の波が来る前に走り抜けなければいけない。これはすべてのライダーに同じ使役を強いることになったが、やはり尋常ではない。

ドギー・ランプキンは、大会序盤にしてエンジンがかからなくなってしまった。塩水をかぶったことが原因ではないかと推察されるが、ランプキンだけでなく、すべてのライダーとマシンが塩水漬けになっていたのだ。これでランプキンは、藤波らから大きく遅れてトライすることになった。

藤波の1ラップ目は、けっしていいとはいえないが、いつもの戦略から考えると、それなりに上位を狙える感触は得ていたという。絶好調でないなりに成績をまとめて上位に進出する術は、去年1年で充分に鍛えてきたはずだった。

1ラップ目、11セクションをすぎたあたりから、1ラップ目の持ち時間が残り少ないという問題が発生した。それで、13セクションは、ややあわただしい動きの中でトライをすることになった。ここで問題があった。13セクションは、一見むずかしく見えるのだが、すべてのライダーがきっかけ石を置いていて、そのおかげで見た目ほどはむずかしくないトライをしていた。いければ簡単というセクションでもあった。ところが藤波の番になると、オブザーバーは「置き石はならぬ」と言う。これまでのみんなが使っていたのだからそれも納得はいかないのだが、だめと言われればしかたがない。その結果、藤波は5点になってしまった。

藤波が悔しいのは、石を置かせてくれなかったことについてではない。石がないなら、ほかにクリーンを狙えるラインがないか、じっくり考える時間が残されていなかった、そういった時間を残せなかったという試合運びについてだった。石がなくても、するべき下見をしっかりすれば、このセクションはクリーンできた可能性が高いのだ。

1ラップ目トップはカベスタニーの6点。藤波は18点だから、その差は大きい。2位のフレイシャは10点。3位ラガは13点。藤波が標的にすべきスペイン勢は、1ラップ目から、調子の波に乗っている。というのも、今回のセクションは海岸の岩場を使った自然の地形とはいえ、グリップは抜群によく、滑るポイントはない。まさしく、インドアトライアルのようなセクションばかりだった。インドアでは、今の藤波と比べると、スペイン勢には一日の長があるのは否めない。

2ラップ目中盤、しかしさらにがく然と知る事実を、藤波は知ることになる。ランプキンがマシントラブルで修理していたのを知っていた藤波が、ランプキンのタイムオーバーが何分だったのかを聞いてみると、なんと、オンタイムだという。トラブルなく走っていた藤波が、13セクションで時間がなく不本意なトライをしてぎりぎりだったのを考えると、これは納得がいかない。実はこの日、持ち時間が1ラップ2ラップともに、10分ずつ延長されていたのだった。そんな大事なことが、公式通知にもならず、スタートでも知らされず、1ラップ目にひっそりと伝聞されていたという。藤波チームは、スペイン勢スタッフも含めて、だれもこの変更を知らなかった。しかし、これも後の祭りだった。

その後、2ラップ目はそんなに悪い走りをしたわけではなかったが、やはりスペイン勢には差を広げられてゴールした。

今回の試合、いくつかのアンラッキーはあったが、やはりその根本は、藤波の練習パターンが、こういったインドアセクションに合っていないということがある。乾いたトリッキーなセクションの練習は、現在の藤波のパターンにはない。もちろん藤波とてこういった練習を無視しているわけではないのだが、新しいマシンに慣れるための優先順位を、滑りやすい路面に置いている。今回のこの結果は、こういったセクション設定だった以上、ある意味、しかたがない結果だったのかもしれない。

ただし、藤波のラッキーを考えれば、このスペイン大会が一日制だったということだ。ライバルを調子づかせる前に、藤波のラッキー大会である日本GPに帰れることで、藤波は本来の勢いを取りもどすにちがいない。

○藤波貴久のコメント

「ランキング5位で日本に帰ることになるなんて、まったく頭になかったことですけれど、今となっては、2戦終わっただけと思うしかないですね。過去最低の成績で日本GPを迎えることになりますが、しかし、これからはこんなものではありません。もちろん、ぼくのレース運びに、まだまだ足りない点があるのも事実です。そういったことを洗い直して、もてぎに向かいます。もてぎには、ぼくも期待しています。もてぎ、アメリカと、ぼくにはゲンのいい大会が続きますから、もてぎで追いつき、アメリカで追い抜くという展開にしたいと思います。幸い、日本、アメリカは二日間ずつありますからね」

World Championship 2005
Tarragona
日曜日/Sunday
順位 ライダー   L1 L2 TO Pts CL
1位 アダム・ラガ ガスガス 13 8 0 21 21
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 6 16 0 22 23
3位 マルク・フレイシャ モンテッサ 10 14 0 24 18
4位 藤波貴久 ホンダ 18 15 0 33 16
5位 ドギー・ランプキン モンテッサ 21 16 0 37 18
6位 トニー・ボウ ベータ 26 15 0 41 14
7位 黒山健一 ベータ 25 25 0 50 13
8位 グラハム・ジャービス シェルコ 41 26 0 67 9
9位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 52 32 0 84 6
10位 タデウス・ブラズシアク ガスガス 46 43 0 89 1
11位 サム・コナー シェルコ 53 44 0 97 5
12位 ジョルディ・パスケット ガスガス 53 51 0 104 0
13位 ジェローム・ベシュン ガスガス 53 53 2 108 3
14位 野崎史高 スコルパ 53 55 0 108 1
15位 シャウン・モリス ガスガス 60 56 0 116 3
L1=1ラップ、 L2=2ラップ、 TO=タイムオーバー、Pts=減点、CL=クリーン

Pix: Hiroshi Nishimaki 公式リザルト(PDF)はこちら
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