2005年 世界選手権第1戦ポルトガル

2005年4月17日/Pampilhosa da Serra

最悪の開幕。しかし運不運も実力……

世界選手権開幕戦。世界チャンピオンとして、ゼッケン1をつけるはじめての大会。そして新しい4ストロークマシンのデビュー戦、父親となって、はじめての世界選手権。さまざまなはじめてが重なった開幕戦は、いつもの開幕戦とは異なる緊張感が漂っていた。

会場は、ポルトガルの北部の街、ポルトから2時間、首都リスボンから4時間ほどの山の中。トライアル会場は世界中どこでも山の中が通例だが、今回はことさら山の中の印象が強い。

マシンは、ようやく開幕にむけてワークスマシンらしいスタイルが整ったが、昨年までの例だと、スペアパーツとして供出することを想定して、マインダーも同じ仕様のマシンに乗っていたものだが、今回はまだそこまで準備が整っていない。藤波、ランプキン、フレイシャ、ライダー3人が、フルスペックのマシンを走らせる。

HRCのスタッフも、スペイン選手権から渡欧してマシンの仕上げに忙しい。例年と変わらぬラガとガスガスチームや、新たにカベスタニーが参入したシェルコチームも、新しいシーズンを迎えて、大きな体制の変化は見受けられないが、モンテッサチームだけは、去年から今年にかけては大きな変化を見せている。

スタートのくじ引きでは、藤波はトップ5人の中でもっとも早いくじを引き当ててしまった。藤波、カベスタニー、ラガ、フレイシャ、そして全ライダーの最後に、ランプキンがスタートする。当初、セクション難度はなかなかのものに見えたが、土曜日にヨーロッパ選手権が開催され、日曜日の朝にはいくつかのセクションが手直しを受けて、難度的には一般的なレベル。岩盤だが、崩れやすい地形で、ざくざくの土質がライダーのグリップ感覚を悩ませることになった。

第1セクション、第2セクションとクリーンしてきて、続く第3セクション。野崎や黒山が手堅く1点で抜けていくセクションで、藤波らのトップクラスならクリーンを狙いたいところ。事実、カベスタニーやランプキンは美しいクリーンを見せた。ここで藤波に、大きなアクシデントが襲う。3mはあろうかという下りの絶壁を、ぽんぽんと足場を見つけながらおろしていくポイントで、藤波はわずかに降りるポイントをミスしてしまった。2mほどの断崖から墜落するかっこうとなった藤波は、しかし最後の最後に体制を整え、最悪のクラッシュから身を守った。しかし着地と同時にマシンから降りざるを得なくなり、5点。

藤波が、試合の序盤にミスを犯すのは珍しいことではなく、昨年は、そのミスを取り戻して勝利をつかむのも珍しいことではなかった。今回も、この5点が致命傷とはならない。しかしその先、第5セクションで、今度はカードを飛ばしたという5点を宣告される。実はカードが飛んだのは、リヤタイヤを岩にヒットさせた衝撃で勝手に落ちたもので、1ラップが終わる頃には点数は修正されていたのだが、藤波のカードには5点、1点、5点と減点が記録されている。ランプキンがすべてクリーンしているだけに、出遅れ感は大きかった。

さらに1ラップ目後半、藤波は時間が無くなっていた。3時間半の1ラップ目の持ち時間を使い果たし、後半のセクションは下見もそこそこにトライした。13セクションでは、あとに走るラガやランプキンがいったん止まって減点を抑えているのに対して、藤波は直登して5点になっている。1ラップを終えて、トップはランプキンの11点。たいして藤波は20点だ(この20点には、第5セクションのカードを飛ばした5点は差し引かれている)。

2ラップ目、本来の藤波なら、ここから反撃を開始するところだが、この日は不運を引きずっている。1ラップ目にカードを飛ばしたと判定されかけたところで、今度はテープが切れた。反撃の勢いが、徐々にそがれていく。

ランプキンと並んで好調に試合を進めたのは、シェルコに移籍したばかりのカベスタニーだったが、1ラップ目後半から点数を増やして失速気味。替わってラガが2ラップ目に猛追撃をするも、ランプキンの気合いの塊のような走りの前に、逆転はむずかしい。

ランプキン、ラガ、カベスタニー。表彰台に登ったのは3人。藤波は、若いトニー・ボウに4位を譲って5位となった。奇しくも昨年のポルトガル以来、最悪のリザルトとなった。

しかし、スコアを見れば、藤波しか走破できていないセクションもあり、またテープが切れるなどの不運がなければクリーンを連発しているなど、明るい材料はある。チャンピオンとして、ニューマシンを走らせる旗手として、試合をどうまとめていくかが、新たな課題として新チャンピオンにのしかかっている。

○藤波貴久のコメント

「最悪、でした。新しいシーズンで、チャンピオンとして、というのは考えていなかったのですが、どこかに世界チャンピオンらしい走りを見せたいという欲がでていたのかもしれません。わずかな気持ちの問題なのですが、今後の課題です。不運があったという見方もあると思いますが、運を味方につけるのも実力ですから、今回はぼくの走りが運を引き寄せられなかったのだと思います。モンテッサ4Tのデビューウィンを飾れなかったということもありますが、それより、もう一度自分の気持ちを組み立て直さないといけません。次回までに、なんとかします!」

World Championship 2005
Pampilhosa da Serra
日曜日/Sunday
順位 ライダー   L1 L2 TO Pts CL
1位 ドギー・ランプキン モンテッサ 11 10 0 21 18
2位 アダム・ラガ ガスガス 19 5 0 24 17
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 12 13 0 25 21
4位 トニー・ボウ ベータ 16 15 0 31 17
5位 藤波貴久 ホンダ 20 12 2 34 19
6位 マルク・フレイシャ モンテッサ 27 9 0 36 15
7位 グラハム・ジャービス シェルコ 23 20 0 43 13
8位 黒山健一 ベータ 24 25 2 51 13
9位 ジョルディ・パスケット ガスガス 38 22 0 60 8
10位 野崎史高 スコルパ 32 31 1 64 9
11位 タデウス・ブラズシアク ガスガス 40 29 0 69 5
12位 シャウン・モリス ガスガス 42 38 0 80 8
13位 サム・コナー シェルコ 50 34 0 84 5
14位 ダニエル・マウリノ ガスガス 56 43 0 99 5
15位 ファビオ・レンツィ モンテッサ 51 48 0 99 3
L1=1ラップ、 L2=2ラップ、 TO=タイムオーバー、Pts=減点、CL=クリーン

Pix: Hiroshi Nishimaki 公式リザルト(PDF)はこちら
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