2005年 スペイン選手権第1戦マンチャ・レアル

2005年4月3日/Ciudad de Mancha Real

感触は良好、試合は4位でくやしい結果

世界のトップライダーが勢ぞろいして腕を競いあうプチ世界選手権の印象のあるスペイン選手権。しかしちょっと危険度の高いセクション設計ゆえか、トップクラスのセニアAクラスには13名のエントリーにとどまった。藤波、ドギー・ランプキン、そしてタデウス・ブラズシアクがスペイン以外からの参加となった。

去年、藤波はスペイン選手権でもチャンピオンをとるつもりで予定を組んだが、規則の変更で、スペイン人以外にはタイトル争いの権利が与えられないことになった。オープンクラスという設定はあって、スペイン人以外でも同じように試合に参加することができるのだが、取り組む姿勢は同じではなく、藤波も日本大会の直前の大会や世界選手権のシーズンが終わってからのラウンドをキャンセルしている。ランプキンも何戦かを欠場した。これで、2004年のスペイン選手権オープンクラスのランキングは、ランプキンが5位、藤波は10位となっていた。

スペイン選手権も、世界選手権と同じく、成績とくじによってスタート順が決められる。トップから5名ずつのグループになってくじ引き。ランプキンはトップ5の中ではもっとも早いスタート(くじ運が悪い)を引いたが、藤波も負けてはいなかった。6番手から10番手の5人の中ではもっとも早いスタート。モンテッサの外人部隊は、二人そろってくじ運が悪い。もっとも、藤波がくじを引きにいったときには、すでに他の選手がくじを引き終わっていて、選択の余地はなかったということだ。

スタートはひとり2分間隔。ということは、ランプキンと藤波の間にも、きっちり10分の時間差がある。一番最後にスタートしたジェロニ・ファハルドとは、20分近い時間差があったわけだ。13名中の10番手だから、藤波の前には、3人のライダーしかいない。藤波と同じあたりのスタート時刻だったライダーとて、実力的には世界選手権ではうんと下位のライダー。藤波がいっしょに回るには、ちょっと勝手がちがう試合展開となった。各セクションは、当然まだ誰も走っていないに等しい。仮に誰かが走っていたとしても、最後まで走破しているライダーはほとんどないから、セクション全部にラインができているということはない。ラインを攻略し、クリーンが出るようにラインを整備するのは、すべて藤波の仕事になった。

しかもスペイン選手権の試合は今回から規則が変わっていた。試合の持ち時間が4時間半となって、1ラップ目が2時間半になったのだ。セクション数は15セクション2ラップと従来と変わらない。いったいどんなペース配分をしたらよいのか、さっぱりわからない。

会場では前日に雨が降り、路面は滑って難度は高そうに見えた。ところがライダーの間からむずかしすぎる、あぶないという声が出て、いくつかのセクションは若干簡単に設定されなおされていた。下見もおろそかにできない。藤波にすれば、むずかしければむずかしいほうが、ひとつの失敗を取り返せるチャンスが多いので歓迎なのだが、いたしかたない。

1ラップ目、藤波はそれでも第6セクションあたりまでは、なんとか遅いスタートのライダーと近いペースで試合を進めていた。第7セクションで、藤波の減点は13点。失敗もあったが、ラインができていなくて無念の5点となったものもあった。この時点ではカベスタニー、ラガ、トニー・ボウ、フレイシャに次いで、5位となっていた藤波。このへんから、さらにコンセントレーションを高めて勝利をつかみにいくのが藤波のいつものパターンだが、この日はそうはいかなかった。

「時間がない」。第7セクションで指摘されたとき、1ラップのタイムオーバーまで、あと40分となっていた。残り8セクション。現実には、タイム計測をしていたのは14セクションだったので、7セクションを40分で走らなければいけないことになった。ここまでの7セクションは1時間50分もかけてきたのに、だ。

藤波と同じような時間帯にスタートした下位ライダーは、難度の高いセクションはトライせずにエスケープしていく。こうすることで、可能性のあるセクションで持ち時間を有効に使うことができるわけだが、藤波にはエスケープするようなセクションはないから、すべてのセクションをきちんと走ることになる。

マシンを止め、駆け足で下見をし、そのままマシンに戻ってセクショントライ、全速力で次のセクションに向かい、ダッシュで下見というつらいトライアルになった。

それでも、10セクションを終えたところで、いよいよ時間がないということになった。結局、11セクションから14セクションまでは、下見なしで走ることになった。12セクションはみんなクリーンを出すんじゃないかという設定だったが、まだラインのできていない入り口のスタート部分で、リヤタイヤががさがさの石ころをかいてしまった。まったく不本意な5点だった。さらに13セクションでは、トライし始めたらカードの位置が変わっていることに気がついた。途中から引き返して進路を変えようとしたが、やはり時間がなく5点になった。1ラップ2時間半という時間設定は、思った以上に厳しいものだったが、さらに早いスタート時間を与えられては、致命的だった。

とはいえ、2ラップ目の自己採点も悪くない。15のセクションを走って減点2は、藤波以外ほかにない。2ラップ目は前日の雨が乾いてきていて、全体にいきやすくなっていたが、それでもラガが3点、カベスタニーが7点の減点をとっている。

2ラップ目のコンディションがよくなっているのは、藤波は第3セクションあたりで実感できた。しかしスタートの遅いライダーなら、その恩恵は1ラップ目の後半にすでに受けられていたはずだ。ここでも、藤波のスタート順がハンディとなっていた。

しかし試合は試合。藤波は残るセクションをきちんと走り抜いた。結果的には、2ラップ目はオールクリーンもできた走りだった。第3セクションでは難関を突破したものの、いきすぎてマシンが立ってしまったのを修正するための1点、第9セクションでは、ターンの最中に、小さな石に前輪をとられて、らしからぬ減点をとった。どちらも、結果論でいえば充分防ぎえた減点だ。

もしも(たらればを語るのは藤波は好きではないが、物語はまとまりやすい)藤波がふつうのスタート順を与えられていたら、充分に勝利もあった今大会だった。しかし結果は結果だ。2ラップ目、オールクリーンをできなかったことで、3位の座はフレイシャに渡った。トップのカベスタニーまでは、8点差があった。

しかしともあれ、今シーズン初めてのアウトドアでの実戦で、マシンと自身のポテンシャルを再確認した藤波。アウトドアの藤波のシーズンが、本格的にスタートする。

○藤波貴久のコメント

「今回の大会はなんと評価すればいいんでしょう。4位という結果はもちろん楽しくありませんが、内容的には悪くなくて、特に2ラップ目は評価も高いと思います。監督にも2ラップ目の走りを評価してもらいました。スペイン選手権で、世界選手権レベルの実戦参加ができるというのは、ぼくにとってはとても収穫の多いことです。もちろん結果はくやしいですけど、1年が楽しみなアウトドアシーズンの開幕です」

Spanish Championship 2005
Ciudad de Mancha Real
Senior A
順位 ライダー   L1 L2 TO 減点 CL
1位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 10 7 1 18 22
2位 アダム・ラガ ガスガス 19 3 0 22 20
3位 マルク・フレイシャ モンテッサ 16 9 0 25 12
4位 藤波貴久 ホンダ 24 2 0 26 22
5位 ドギー・ランプキン モンテッサ 20 7 0 27 18
6位 トニー・ボウ ベータ 15 17 0 32 18
7位 ダニエル・オリベラス ガスガス 44 28 1 73 4
8位 タデウス・ブラズシアク ガスガス 38 30 6 74 8
9位 ダニエル・ジベルト ガスガス 55 40 0 95 3
10位 ジョセ・マリア・ジュアン モンテッサ 63 62 2 127 0
11位 デエゴ・ガリド モンテッサ 67 61 0 128 0
12位 ジョアン・コルドン ガスガス 68 66 0 134 0
13位 ダニエル・クエルド ガスガス 75 75 0 150 0
リタイヤ ジェロニ・ファハルド ガスガス - - - - -
L1=1ラップ、 L2=2ラップ、 TO=タイムオーバー、CL=クリーン

Pix: todotrial.com
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