2005年 インドア世界選手権第第11戦(全12戦)
イギリス・北アイルランド大会

2005年3月19日/Stadium: Odyssey Arena/観客数:5500人

インドアシーズン終盤。結果は苦しいが……

南アメリカ大陸から帰国して1週間。スペインに在住する藤波にとっては、2戦続けての“海外”大会となる。今回は、北アイルランドのベルファスト。区分けはイギリス大会だが、ヨーロッパ大陸からはずいぶん遠い感覚となる。

今回も、藤波はスタンダードベースのマシンに乗る。アウトドアシーズンの開幕を控えて、ワークス仕様のマシンの乗り込み時間をたっぷりとりたいという希望が藤波にあり、インドア大会へワークスマシンを輸送するタイムロスを避けたかっこうだ。フレイシャも、藤波と同じくこの時期にはワークス仕様のマシンでの乗り込みをおこなっている。

一方、ランプキンは北アイルランドではワークス仕様のマシンに乗った。取り組み方は同じなのだが、ランプキンはこの時期、地元イギリスでの乗り込みを希望した。マシンがイギリスにあれば、北アイルランドは遠くない。ふだんの練習場所のちがいが、北アイルランドのインドア大会で、それぞれ異なるマシンを走らせることになったのだ。

前回アルゼンチン大会では、スタンダードのマシンを走らせるコツをつかんだ藤波だったが、アルゼンチンと北アイルランドでは、同じインドア大会でも、いくつかちがうことがあった。まず、その盛り上がり方だ。イギリスの人たちはやはり紳士的にインドアトライアルを楽しむ。一方アルゼンチンの人は、南半球に住む熱血漢たちだ。初めてインドアトライアル大会が開会されたとは思えないほどの盛り上がりで、イベントは大成功だった。1週間前にそういう経験をした選手たちは、北アイルランドでは、どっちかというとおとなしいお客さんたちに囲まれて、自らテンションを高める努力をしなければいけなかった。もっとも、世界屈指のライダーばかりだから、お客さんがどうあれ、自分のコンディションをベストの状態に持っていく術は身につけている。お客さんのことは、余談である。

藤波にとって重要だったのは、アルゼンチンではセクション素材が現地調達されたもので、それらが複雑にからまったテクニカルなものになっていた。このようなテクニカルな設定は、スタンダードのマシンを走らせる藤波には、歓迎すべきことだった。ところが北アイルランドのセクションは、スペインから運ばれてきた素材で構成されていた。スペインのインドア素材は、見た目の派手さを追求していて、ひとつひとつが大きい。ほとんどの場合、スタンダードのマシンの能力が足りないことはないのだが、こういった一部のセクションは、300cc近い排気量のラガやカベスタニーたちがいけるように作られている。藤波のハンディは否めない。

もちろん、ハンディがあるからといって戦いをあきらめるような藤波ではない。このインドアシーズンでは、藤波のみならず、チームの3人は3人とも、自身の実力を100%発揮できない苦しい戦いが続いた。しかしその中でも、藤波やランプキンは、何度か優勝戦線にからむ戦いを見せることができた。中には、スタンダードベースでの時もあった。今乗り込みをしているマシンとはちがうマシンで、その点も大きなハンディだが、いろいろな気持ちを切り替え、インドア大会に集中することで、終盤戦にむけて、上位を狙うという藤波の姿勢は、頑固である。

今回、藤波のスタートは6番目。ゲストライダーであるスティーブ・コリーとシャウン・モリスのふたりに続いては、カベスタニー、ラガ、ランプキンと走って、次が藤波だった。藤波の前に走った3人の点数は、いずれも一桁だった。セクションを下見した藤波は、5点をひとつとるのは避けられないと考えていた。つまり、ファイナルに進むには、その他のセクションをほぼ完璧にクリーンしていかなければいけないわけだ。結果的に、藤波が苦戦すると読んだ第5セクションは、ラガとカベスタニー以外は全員5点となった。スタンダードマシンで走る藤波とフレイシャが5点となるのもいたしかたない。

しかし今回の藤波は、第1セクションで2点ついてしまったところから始まった。さらに第2セクションで5点。これがトライアルだといえば納得せざるを得ないことではあるが、足をついたところで足を滑らせてそのまま転倒したり、アンダーガードを引っかけたところでエンストして滑り落ちたり、予想に反する減点が多い、今回の藤波だった。

インドア大会は、セクション数が限られているので、特に今回の藤波のように、後半のスタートで、序盤に大きな減点を重ねてしまった場合は、挽回のチャンスはごく少ない。最後の最後まで勝負を捨てないとはいいながらも、ダブルレーンでライバルが大転倒するかもしれない前提で集中し続けなければいけないのは、インドアトライアルならではのむずかしさかもしれない。

今回の藤波は、6位のリザルトに沈んだ。ゲストの二人をのぞけば、最下位ということだ。実は最後に走ったフレイシャのトライの際、セクションがこわれて溶接をしなおしたりして、フレイシャの持ち時間が無制限になったり、こわれたセクションをやりなおししたりできたので、勝負としてみると、ちょっとあやしい面もあるのだが、勝負といいつつショートしての一面も大きいインドアトライアルでは、こんなこともあり得る。

藤波は、クォリファイラップの後半、北アイルランドのお客さんたちに、パワーあふれる走りを大いに楽しんでもらった。優秀な成績で勝利することもチャンピオンとしての務めだが、それがなんらかの理由でかなわなかったとき、それでもお客さんに楽しみを提供するのが、チャンピオンとしての重要な任務なのだ。

アルゼンチンでは、ランキング3位争い継続中だったが、今回の結果で、ランキング3位獲得もかなり厳しいものとなった。ランキング3位を獲得するには、藤波が優勝してかつ、ランプキンとファハルドに5位以下になっていただかなければいけない。もちろん、厳しいが不可能な条件ではないので、最終戦は、ランキング3位を目指して勝利を狙うというスタンスとなる。

来週、インドア最終戦。それが終わると、スペイン選手権で、いよいよアウトドアでの最終調整となる。

○藤波貴久のコメント

「今回はうまくいっても6点はしょうがないと思っていましたが、それ以外にも失敗してしまいました。あと10点は減らせたなという実感です。ぼくたちにとっては、マシンの性能の問題も大きいですが、自分たちの本来のバイクかそうでないかというのは大きな問題。次回の最終戦は、スタンダードベースではなく、自分たちの本来のバイクで走れる可能性もあるので、インドアシリーズの最後に、気持ちよく走ってアウトドアのシーズンにつなげたいという気持ちです」

Indoor Trial World Championship 2005
Round 11
Final Lap(決勝)
1位 アダム・ラガ ガスガス 4
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 8
3位 ドギー・ランプキン レプソル・モンテッサ・HRC 28
Qualificarion Lap(予選)
1位 アダム・ラガ ガスガス 1
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 3
3位 ドギー・ランプキン レプソル・モンテッサ・HRC 6
4位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 7
5位 マルク・フレイシャ レプソル・モンテッサ・HRC 14
6位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 19
7位 スティーブ・コリー ガスガス 22
8位 シャウン・モリス ガスガス 27
PointStandings(ランキング)
1位 アダム・ラガ 106
2位 アルベルト・カベスタニー 80
3位 ジェロニ・ファハルド 55
4位 ドギー・ランプキン 55
5位 藤波貴久 51
6位 マルク・フレイシャ 40
7位 トニー・ボウ 14
8位 タデウス・ブラズシアク 8
9位 ジェローム・ベチューン 5
10位 スティーブ・コリー 2
11位 シャウン・モリス 1
12位 ミケーレ・オリツィオ 1
13位 野崎史高 1

Pix:
< http://www.worldtrials.info/>
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