2005年 インドア世界選手権第10戦(全12戦) アルゼンチン大会

2005年3月12日/Stadium: Estadio Luna Park/観客数:5000人

STDの乗り方をマスター、表彰台獲得

ロシア大会に続いて、インドア世界選手権2度目の長距離遠征は、南アメリカ、アルゼンチンのブレノス・アイレスでの開催。現在、チームではアウトドアシーズン開幕に向けて、藤波らのライディングに合わせたワークスバイクの開発の追い込み中。南アメリカまでマシンを送ってしまっては、テストスケジュールが遅れてしまうことになる。そのため、今回の試合に、モンテッサの3人はスタンダードベースのマシンで参戦することになった。本来なら、こういったローテーションに対応するだけのワークスマシンを用意するのだが(昨年はそうしていて、チームは3人のインドア参戦のため、多くのマシンを製造する事態となった)、開発中で仕様が決まっていないので、何台ものマシンを作るわけにはいかない。それで、遠方地の大会にはスタンダードベースで、という決断となったわけだ。

このシーズン、藤波はスタンダードベースのマシンでファイナルに進んだことがない。実績的には、ハンディをかかえての試合となることが予想されたのだが、しかし、スタンダードだからダメとあきらめてかかるような藤波ではない。自分にとってベストな環境を作るのもライダーとして重要な仕事だが、与えられた環境でベストを尽くすのも大事な仕事。そして世界チャンピオン獲得のためには、その両方がとても大きな意味を持つことを、藤波は知っている。

今回はワイルドカードライダーのエントリーがなく、一番スタートはラガだった。今回チャンピオンを決定しようとするラガだが、第1セクションでいきなり5点になった。その後も、いたるところで失敗している。藤波は、今日のラガはおかしいのではないかと考えた。次に、ランプキンが走った。ところがランプキンも、失敗ばかりだ。それで藤波は、ラガがおかしかったのではなくて、セクションがむずかしかったのかと思いなおした。ランプキンの次に走るのが、藤波だ。

これまで藤波は、仕様のちがうマシンへの乗り換えに手間取って、不本意な成績を残すことが多かった。しかし今回は、マシンなりの走らせ方を考えることができた。戦い方そのものは、行けるところはきっちり走って成績を残し、いけないところはある程度最初からあきらめて時間をセーブするという、いつもと同じ作戦だ。当初藤波は、今回のクォリファイのセクションを、よければ15点、悪くても20点くらいと予想していた。そしてそのとおり、時間を50秒ほど残しながら20点でクォリファイを終了し、ダブルレーンではファハルドに勝ちを譲って(ダブルレーンで転倒すれば、クォリファイ敗退の可能性もある)クォリファイ2位でファイナルに進出した。

ファイナルでは、ふたつだけ、ガスガスライダーの二人に有利というか、スタンダードの藤波にはつらいという高いステアケースのセクションがあった。これを、藤波は両方とも5点となっている。ステアケース以外はよく走ったのだが、1ヶ所で失敗すればそのセクションは減点5と記録されるのだから、これは手痛い。ライバルのマシンは排気量も300cc近い。藤波は250ccのスタンダードだから、世界のトップを争うインドアセクションでは、ちょっとハンディをかかえることになる。このふたつのセクション、ライバルはともに、クリーンしている。今テスト中のマシンなら、藤波も楽勝でこれを越えていく自信はあったから、10点はよけいに減点したことになる。今回はファハルドががんばって初優勝したが、藤波にすれば、勝てた試合で3位になってしまったという印象だった。

スタンダードマシンは、今テスト中のワークスマシンに比べると、パワーに劣るところがある。パワーの必要な乗り方をしていればそれがウィークポイントとなるが、走らせ方を少し変えることで、必ずしもそれはウィークポイントではない。「飛んでいくよりグリップする走り」と藤波は走らせ方を表現する。4ストロークマシンにはメリットはたくさんあるのだから、少しのウィークポイントをカバーすることで、スタンダードでもまだまだ高い戦闘力を発揮させることは可能だ。逆に言えば、本番であるアウトドアシーズンに向けてのマシンが順調に仕上がりつつあり余裕が出てきたので、スタンダードでの走らせ方に思いを巡らせるようになったという背景もある。

しかし、スタンダードマシンでの走り方の模索が進んだのは、藤波にも無意味なことではない。この後のインドア世界選手権では、藤波はスタンダードベースで戦うことが予定されている。次戦アイルランドは、ヨーロッパとはいえ、スペインからは遠い地区なので、これもテスト用のマシンを送ってしまうと、本拠地でのテストや練習に支障をきたす。藤波はスペインの本拠地での乗り込みを希望したため、インドアではスタンダードベースで戦うことが決まったわけだ。一方ランプキンは、アイルランドではワークスマシンに乗る。ランプキンは、アルゼンチンのあと、地元イギリスに帰ってワークスマシンに乗り込み、そのままアイルランドのインドアに出場するスケジュールとなっているからだ。

すでにラガのタイトルは決まってしまったので、チャンピオン藤波貴久としては、ランキング争いへの興味も薄らいでいる。焦点は、間もなく始まるアウトドアの世界選手権に絞られている。

○藤波貴久のコメント

「本来走らせるべきマシンだったら勝てていたかなぁという気持ちもありますが、スタンダードマシンをしっかり走らせることができて、試合運びも順調に進められた。予想通り、予定通りの結果が出たという感じです。残り2戦ですが、ラガが早々にチャンピオンを決めてしまって、チャンピオンになれないなら、あとは何位でもいっしょだと思えてしまうので、残りのインドアではスタンダードを上手に走らせながら、アウトドアの開幕に向けて、準備に精を出します。スタンダードを走らせるという点では、今回は収穫の多い大会でした」

Indoor Trial World Championship 2005
Round 10
Final Lap(決勝)
1位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 16
2位 アダム・ラガ ガスガス 17
3位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 24
Qualificarion Lap(予選)
1位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 19
2位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 21
3位 アダム・ラガ ガスガス 23
4位 マルク・フレイシャ レプソル・モンテッサ・HRC 24
5位 ドギー・ランプキン レプソル・モンテッサ・HRC 28
6位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 28
PointStandings(ランキング)
1位 アダム・ラガ 96
2位 アルベルト・カベスタニー 72
3位 ジェロニ・ファハルド 50
4位 ドギー・ランプキン 49
5位 藤波貴久 48
6位 マルク・フレイシャ 36
7位 トニー・ボウ 14
8位 タデウス・ブラズシアク 8
9位 ジェローム・ベチューン 5
10位 ミケーレ・オリツィオ 1
11位 野崎史高 1

Pix:
< http://www.worldtrials.info/>
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