2005年 インドア世界選手権第9戦(全12戦) イタリア大会

2005年3月5日/Stadium: Palalgida Stadium/観客数:3500人

久々、納得の表彰台

先週の大会が終わってすぐ、新しい仕様のエンジンをテストし始めた藤波貴久は、あいかわらず充分とはいえないまでも、この大会に向けての乗り込みもおこない、久々にあるべき姿に近い形で大会参戦となった。今大会はイタリア中央部、ピサの斜塔で有名なピサに近い、トスカーナ地方のリボルノでの開催だ。

この大会前のテストでは、日本からHRCの技術陣がスペインへやってきて、大々的なテストとなった。エンジンは藤波らのトップライダーの要求に応えるべく、パワーも増してきている。フレームまわりはまだスタンダードベースだが、このマシンのフレームは完成度が高く、スタンダードでも要求の8割ほどは満たしているということで、テストはもっぱらエンジンを中心に続けてられている。

今回、久々にクォリファイを通過してファイナルを走ることになった藤波だが、マシンがよくなり、そのマシンに対して乗り込む時間が少しでもとれるならば、こういう結果に結びつくという、世界チャンピオンにすれば当然の結果を、あらためて証明してくれたといっていい。

クォリファイでは、藤波の前をボウやランプキンが走っている。しかし二人ともそんなにいい走りをしているようには見えず、藤波はクォリファイでの減点を5点内外に押さえなければ、ファイナルへの進出はむずかしいだろうと考えていた。

最初の3セクションをクリーンして(最初の3セクションをすべてクリーンしたのは、全8人中藤波だけだった)、クォリファイで最難関となった第4セクションにトライ。結果として、ここはカベスタニーとラガのみがクリーンしたセクションだったが、藤波はここで失敗。ところがここでの失敗は、実は大きな痛手をマシンに与えていた。

5点のあと調子よくクリーンを続けた藤波だったが、リヤホイールに異常が発生していることに気がついた。なんとスポークが5〜6本折損していて、ホイールがぐらぐらになっている。インドアトライアルでは途中でマシンを修理している時間はないから、選択肢はこのまま走るか、スペアマシンに乗り換えるしかない。ところがモンテッサ陣営には、まだスペアのマシンまでそろえる余裕がない。スペアマシンに持ち込まれていたのは、まったくのスタンダードマシンだった。

第1戦シェフィールドとロシア大会では、スタンダードベースのマシンで戦っているが、このスタンダードベースのマシンはこのとき、アルゼンチンに向かって輸送の最中だった。藤波用にセットアップされたワークスエンジンを積んだマシンから乗り換えるには、ギャップが大きい。悩んだ末に、藤波はホイールがぐらぐらしているワークス仕様で、そのまま最後のセクションを走る決断をした。そしてふたつめの5点を喫してしまった(写真はファイナルでのもの。前輪が正しいエプソルカラーだが、後輪はスペアに履き替えられているため、塗装されていない)。

ここまでで藤波の減点は10点。当初の予定の倍の減点をとってしまったことになる。しかしその後に走ったいつものメンバーがぴりりとしない。ファハルドが19点、フレイシャが15点をとり、藤波のファイナル進出が決まった。終わってみれば、藤波が通るべくして通ったといってもいい、納得できるファイナル進出だった。

そしてファイナルラップ。セクションは、藤波の弁を借りればそんなにむずかしいこともないそうだが、しかしそこは世界選手権インドア大会である。このラップ、藤波の調子はけっしてよいとはいえなかった。足をつけば走破はできるところで、足をつきそこねて5点になったり、ちょっとしたことでふらふらしてしまって木から落ちて5点になったり、序盤の3セクションをすべて5点。

ところがライバルのカベスタニーとラガも、同じような走りでセクションに苦労していた。ダブルレーンでラガにもカベスタニーにも勝利し、第7セクションまで終えた時点では、ラガはともかく、カベスタニーと藤波は同点で並んでいた。第8セクションは、クリーンがむずかしいセクションだった。そこで確実に1点をついて抜けることにした。カベスタニーもおそらく1点ついてくるだろう。そしたらプレイオフで勝負して2位をもぎ取ろうという、藤波の作戦だった。

ところが不運。1点で抜けたはずの最終セクションは、なんと1秒のタイムオーバーがあった。1秒でもタイムオーバーはタイムオーバー。30秒まで1点加算のペナルティで、このセクションの減点は2点。それを見たカベスタニーは、安心して1点ついて最終セクションを走破して、1点差で2位の座を獲得していったのだった。

惜しいところで2位の座をとりそこねた藤波だったが、今回はテストにヨーロッパにきているHRCの日本人スタッフの前で表彰台に乗ることができた。みんなの仕事に対する、それが藤波らしいアピールでもあった。まだまだ成績は本調子の結果とはいえないが、来るシーズンへの期待は、徐々に高まっている。

今回の表彰台で、ランキング3位のランプキンには3点差とつめより、一時は同点に並ばれたファハルドには2点差で少々引き離しに成功している。

次週は地球の裏側、アルゼンチンでの開催となる。

○藤波貴久のコメント

「久々に、満足のいく予選通過ができました。いいテストが送れて、いい仕様ができあがったので、こういう結果に結びついたということです。マシンはこれからもよくなるので、まだまだ楽しみです。ランキングのことは気にしていません。ドギーとの点差も、ぜんぜん知らないんです。今は、とにかくいいマシンを作ることが優先課題です」

Indoor Trial World Championship 2005
Round 9
Final Lap(決勝)
1位 アダム・ラガ ガスガス 21
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 27
3位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 28
Qualificarion Lap(予選)
1位 アダム・ラガ ガスガス 6
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 9
3位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 11
4位 マルク・フレイシャ レプソル・モンテッサ・HRC 15
5位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 19
6位 ドギー・ランプキン レプソル・モンテッサ・HRC 20
7位 トニー・ボウ ベータ 20
8位 ミケーレ・オリツィオ スコルパ 33
PointStandings(ランキング)
1位 アダム・ラガ 88
2位 アルベルト・カベスタニー 69
3位 ドギー・ランプキン 45
4位 藤波貴久 42
5位 ジェロニ・ファハルド 40
6位 マルク・フレイシャ 31
7位 トニー・ボウ 14
8位 タデウス・ブラズシアク 8
9位 ジェローム・ベチューン 5
10位 ミケーレ・オリツィオ 1
11位 野崎史高 1

Pix:Giulio Mauri & Octagon Esedos
< http://www.worldtrials.info/>
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