2005年 インドア世界選手権第1戦(全12戦) イギリス大会

2005年1月3日/Hallam FM Sheffield Arena/観客数:8500人

4ストロークデビュー戦はまず3位から

2005年のシーズンが開幕した。インドア世界選手権第1戦はイギリスのシェフィールド。ランプキンの地元にごく近くて、ここでは毎年ランプキンが勝利しているという伝統の大会でもある。

この大会、セクション設営をしたマーチン・ランプキン(ご存知、ドギーのお父さんで、この大会ではずっとセクションコーディネイトをしている)曰く、危険性を抑えるため、ステアケースなどの高さを抑え、その分テクニカル度を増したというトライアル的難易度の高い大会となった。

この設定がライダーを苦しめた。クオリファイでは9セクションを11分で走りきらなければタイムオーバー減点をもらうことになるが、どのライダーも減点なしでは通過できない。タイムオーバーがなかったのは、ランプキンただ一人という厳しい設定だった。時間がないだけでなくて、体力的にもつらい。藤波も、思った以上に疲労を感じたクオリファイラップとなった。

はじめての4ストロークエンジン、RTL250Fでの戦いは、思った以上に走れたという印象があった。この“思った以上に走れた”という印象は、4ストロークのポテンシャル自体のことを言っているのではない。4ストロークのポテンシャルは、すでに練習でも充分に手応えを感じている。アウトドアの練習でも、これまで2ストロークで行けていたところは全部行ける。しかも、従来よりも楽に行けることも多い。こういったことから、4ストロークのポテンシャルそのものに、いまさら不安もないし、逆に意外な手応えを感じることもなかっただろう。

しかしこれはインドアの大会である。4ストロークマシンとインドアとの相性は、これがはじめてだった。アウトドアではともかく、インドアではもう少し苦労するかもしれないというのが、藤波の予測だった。それが、思ったよりもはるかに順調にトライが進められたのだった。

今回のスタート順はアウトドアのランキング順だった。だから藤波は一番最後のスタートとなっている。去年のスタート順は毎回くじ引きだったのだが(といっても、上位3人、下位3人の2グループの中でのくじ引きだった)、今年スタート順は、毎試合ローテーションとなるという。どのライダーも、一番最初のスターとにもなり、最後のスタートにもなるということだ。インドアならではのルール変更。

なぜインドアなのにアウトドアのランキングでスタート順が決まるのかと、ラガ陣営から今回のスタート順に物言いがついたが、もちろんシステムは変わらず。藤波にすれば、最後のスタートが最後から二番目になるだけなので、どちらでもかまわない。物言いをつけたのも、ラガ本人ではなくて、ラガの取り巻きだったようだ。

藤波は最後のスタート順を最大限に利用する作戦を立てた。みんなが11分の持ち時間に苦労したのを見ていた藤波は、思いきった作戦をとった。難易度の高い4セクションと5セクションを、最初から5点になる気持ちで走った。簡単にすぐ5点となって、その分の時間をほかのセクションの攻略に回すことにしたのだ。結果的に、3位以下の選手は第4,第5セクションはみな5点だったから、この判断は大正解だった。藤波のタイムオーバーは1点。最後のダブルレーンは、お客さんの期待を一身に受けたランプキンとの戦いとなったが、ここは5点にならなければファイナル進出は確実だ。5点にならないように、ダブルレーンでの勝利は考えていなかった。ランプキンファンのお客さんも、ここでのランプキンの逆転があり得ないのを知っていたから、すでに勝負はあったとランプキンのファイナル進出はあきらめていたようだ。

観客席では、はじめて4ストロークで走るということに注目が集まっていた。地元の英雄ランプキンだけではなく、モンテッサチームのの3人ともが、同じように注目されていた。4ストロークでもこれだけ走れるのかという、観客席の歓声がライダーにもしっかりとどいた。実は“4ストロークでもこれだけ走る”という評価は、正しい評価ではないのだが、それが、お客さんの素直な反応だった。

ファイナルラップは、いい感じでスタートした。カベスタニーが序盤で5点を続けてとったので、途中までは、ラガとのトップ争いとなった。でも藤波は最後のふたつで5点をとってしまった。これが痛かった。これで、藤波のポジションは3位が決定的となった。

結果的には、2位カベスタニーとの点差はわずか3点。カベスタニーは、9セクションで5点が1点になるというジャッジの手違いがあった(落ちるマシンを引っ張ってもらってオブザーバーは5点を示していたのだが、アナウンサーが1点と勘違いをして興奮し、引っ込みがつかなくなった)。藤波には、2位になるチャンスはあったのだ。

とはいえ、インドアでは、確実に表彰台を狙うことが目標(今年から、ファイナルに進出するのは出場者数に限らず、常に3人となった)。その目標はとりあえずクリアして、まずは悪くない2005年のシーズンインを果たした藤波だった。

さて、4ストロークでの初試合となった今回、藤波が走らせたのは、スタンダードベースのRTL(コタ)だった。アウトドアのシーズン開幕に向けて開発を進めているワークスマシンは、台数の確保などの問題があって、遠方のイギリス大会には用意が間に合わなかった。スタンダードベースというのは、ライディングポジションの変更と、各部のパーツをチタン製に変更した程度で“お金さえかければ誰でもできる改造”である。今回藤波が3位になったマシンは、まったくふつうの市販車に近い。

でも、周囲はマシンがスタンダードだということを、誰も信用しない。ライバルチームは、4ストロークマシンの潜在性能を見くびっているようだ。今開発中のワークスマシンはもちろんスタンダードベースのマシンとはポテンシャルにちがいがある。シェフィールドの観客席では「4ストロークでもこんなに走る」と驚きの歓声が上がったが、藤波自身は「スタンダードでもこれだけ走れる」と内心驚きを隠せないでいた。スペイン大会など、本拠地バルセロナに近いインドア退会では、徐々にワークスマシンの投入も行われていく。ワークスマシンでの活躍が、次の楽しみとなる。

○藤波貴久のコメント

「優勝はともかく、2位にはなれた大会を3位で終わってしまったという点ではちょっと残念な結果ですが、開幕戦を3位というのは、悪くはない結果です。次回からはワークスマシンに乗れるかもしれないので、戦い方をちがってくるのではないかと思いますが、まずは、ファイナルに毎回進出すること、イコール、今年のレギュレーションでは表彰台獲得になりますが、そこを目標に、インドア大会を戦っていきたいと思います」

Indoor Trial World Championship 2005
Sheffield Indoor Trial
Final Lap(決勝)
1位 アダム・ラガ ガスガス 27
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 30
3位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 33
Qualificarion Lap(予選)
1位 アダム・ラガ ガスガス 11
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 16
3位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・HRC 20
4位 ドギー・ランプキン レプソル・モンテッサ・HRC 23
5位 マルク・フレイシャ レプソル・モンテッサ・HRC 27
6位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 29
7位 タデウス・ブラズシアク ガスガス 32

Pix:Eric Kitchen(Octagon Esedos)
< http://www.worldtrials.info/>
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